- 著者
-
嶋根 政充
- 出版者
- 日本経営学会
- 雑誌
- 經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
- 巻号頁・発行日
- pp.F23-1-F23-8, 2019 (Released:2019-09-26)
一般に承継なき承継で行われるファミリー型事業は,組織-個人の軸ではなく,技術―市場の軸がしっかりしている企業である。そこには他社では追随できない技術をもっているか,市場で他社があまり行われていないかの,いずれにせよ,ニッチの事業で成り立っているのであり,いわば持続的イノベーションを不断に行っている企業なのである。これらは,いわゆる“グローバルニッチトップ企業”(国際市場の開拓に取り組んでいる企業のうち,ニッチ分野において高いシェアを確保し,良好な経営を実践している企業)との共通点もあるともいえるわけである。 本稿では,強みのある技術を中心に円滑に事業承継が進み,今なお業績を維持している,森野化工株式会社と株式会社沼澤製作所を対象として取り上げ,半構造化インタビューによる事例研究を行った。その結果,顧客満足度を向上させるために不断の努力を行う点などは共通点として挙げられる一方,特許を取ることは技術のニッチを揺るがすということで,特許を取らない戦略をとる沼澤製作所と,汎用技術を応用する森野化工とは,その戦略が異なったなどの相違点も見られた。