著者
日和佐 楓 嶋田 大作
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

長距離自然歩道は、環境省が全国に設置している歩道で、九州自然歩道もその一つである。豊かな自然環境に触れることによって、自然保護意識を高めることを目的にしており、環境政策の基盤的手段と位置づけられる。しかし、これまでの研究では、長距離自然歩道の利用者の特性や環境保護意識の解明は、充分に行われていない。本研究では、この課題について、九州自然歩道における利用者アンケート調査を実施して、その解明に取り組む。調査方法は、ルート上の山頂や登山口の3ヶ所で、調査員が自記式質問紙を配布・回収する形で2015年秋に行った。特に、環境意識については、一般的な環境意識と自然歩道利用者のそれを比較するため、内閣府の世論調査と同じ内容とした。その結果、九州自然歩道の利用者は、森林への親しみや生物多様性への取り組みに関して、世論調査よりも環境意識が高い結果となった。また、これらの項目では、九州自然歩道の利用頻度が高い利用者ほど環境意識も高くなることが分かった。他方、自然環境との関係性が低い循環型社会の形成に関する質問では、自然歩道利用者の環境意識において、世論調査との差や利用頻度との関係はみられなかった。