著者
嶌原 康行 飯室 勇二 河田 則文 山岡 義生
出版者
京都大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

【目的・方法】PDGFシグナルは肝星細胞の増殖に関与するが、NACによる肝線維化の防止効果とその機序について検討した。ラット肝から星細胞を分離し、PDGF刺激下の細胞内シグナル伝達をWestern blotで、RNAをNorthern blotで解析した。蛋白分解酵素阻害剤;E64、leupeptin、pepstatin A、CA074にて、蛋白分解の機序を解析した。チオアセトアミド肝線維症ラット、胆管結紮ラットに対して、NAC(100mg/body)を毎日6週間投与した。また、6週間TAA投与後、NACを投与した。【結果】NACのチオール基によってPDGFレセプターのヂスルフィド結合を解離し、星細胞から細胞外へ分泌しているカテプシンBによってPDGFレセプターを分解することが明らかとなった。また、このNACの分解作用は、TGF-betaレセプターIIやN-CAMなどのIgGタイプの細胞表面タンパクにも認められた。さらに、PDGFレセプターの分解により、それ以降の細胞内シグナルを抑制し、星細胞の増殖を抑える。また、これは血管平滑筋細胞でも認められた。さらに、チオアセトアミド誘導肝線維化モデル、胆管結札ラットでNACが抗線維化効果を発揮することを確認した。【考察】NACのレセプター分解という新たな作用を発見し、それによってシグナルを抑えることが明らかになった。通常は、細胞外は酸化状態であり、カテプシンBは不活化しているが、NACの投与により、細胞外を還元することにより、カテプシンBを活性化させると考える。また、NACの抗線維化作用は、カテプシンBのコラーゲン分解作用も加味していると考えられる。以上より、我々はNACが分泌カテプシンBを利用してPDGFレセプター、TGF-betaレセプターIIの細胞外分解を誘起することを確立し、その作用が肝線維化治療に効を奏することを発見した。