著者
元山 宏行 榎本 大 安田 隆弘 藤井 英樹 小林 佐和子 岩井 秀司 森川 浩安 武田 正 田守 昭博 坂口 浩樹 河田 則文
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1234-1239, 2008 (Released:2008-08-05)
参考文献数
16
被引用文献数
4

症例は37歳の女性.肥満症に対し薬局で購入した防風通聖散を約1カ月間服用していた.服用開始から約2カ月後に黄疸を主訴に来院し,肝機能異常を認め入院となった.肝生検では門脈域と小葉内に炎症細胞浸潤を認めたが線維化は乏しく急性肝炎と診断した.防風通聖散についてリンパ球刺激試験は陽性であり,成分別ではトウキ,センキュウ,ハッカが陽性であった.DDW-J2004のスコアリングにより薬物性肝障害と診断した.
著者
河田 則文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.938-943, 2018-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
10

B型,C型慢性肝疾患の治療はめざましい進歩を遂げ,肝炎ウイルスの制御が可能となった.しかしながら,肝硬変,アルコール性・非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH),原発性胆汁性胆管炎や原発性硬化性胆管炎等肝線維化が鍵となる疾患に対する治療はunmet medical needsにとどまっている.これを解決するためには,肝線維化の病態を分子細胞論的に細密に解析し,その情報をもとにした標的治療薬の開発が必須である.肝臓における細胞外マトリックス物質(extracellular matrix materials:ECMs)の産生細胞は星細胞や門脈周囲の線維芽細胞が主体であり,それらが活性化すると筋線維芽細胞(myofibroblast:MFB)として線維化の増幅のみならず,炎症や免疫反応制御,さらには肝癌の微小環境構成の主役となる.従って,肝線維化の治療には,肝細胞障害の阻止と同時に活性化星細胞の機能制御が必要である.近年,線維化誘導分子の解析が進展し,それらをターゲットとした臨床試験が始まっている.
著者
嶌原 康行 飯室 勇二 河田 則文 山岡 義生
出版者
京都大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

【目的・方法】PDGFシグナルは肝星細胞の増殖に関与するが、NACによる肝線維化の防止効果とその機序について検討した。ラット肝から星細胞を分離し、PDGF刺激下の細胞内シグナル伝達をWestern blotで、RNAをNorthern blotで解析した。蛋白分解酵素阻害剤;E64、leupeptin、pepstatin A、CA074にて、蛋白分解の機序を解析した。チオアセトアミド肝線維症ラット、胆管結紮ラットに対して、NAC(100mg/body)を毎日6週間投与した。また、6週間TAA投与後、NACを投与した。【結果】NACのチオール基によってPDGFレセプターのヂスルフィド結合を解離し、星細胞から細胞外へ分泌しているカテプシンBによってPDGFレセプターを分解することが明らかとなった。また、このNACの分解作用は、TGF-betaレセプターIIやN-CAMなどのIgGタイプの細胞表面タンパクにも認められた。さらに、PDGFレセプターの分解により、それ以降の細胞内シグナルを抑制し、星細胞の増殖を抑える。また、これは血管平滑筋細胞でも認められた。さらに、チオアセトアミド誘導肝線維化モデル、胆管結札ラットでNACが抗線維化効果を発揮することを確認した。【考察】NACのレセプター分解という新たな作用を発見し、それによってシグナルを抑えることが明らかになった。通常は、細胞外は酸化状態であり、カテプシンBは不活化しているが、NACの投与により、細胞外を還元することにより、カテプシンBを活性化させると考える。また、NACの抗線維化作用は、カテプシンBのコラーゲン分解作用も加味していると考えられる。以上より、我々はNACが分泌カテプシンBを利用してPDGFレセプター、TGF-betaレセプターIIの細胞外分解を誘起することを確立し、その作用が肝線維化治療に効を奏することを発見した。
著者
河田 則文 久保井 広志 申 東桓 筒井 ひろ子 溝口 靖紘 小林 絢三 近藤 洋子 森澤 成司 門奈 丈之 山本 祐夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.855-859, 1989-08-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

マウスKupffer細胞から産生遊離するPGE2量に及ぼすinterleukin 1(以下,IL1)とtumor necrosis factor(以下,TNF)の影響について検討した.マウスKupffer細胞を培養すると,spontaneousにもPGE2の遊離がみられ,培養上清中のPGE2量は培養開始後24時間まで経時的に増加したが,TNFを添加するとTNF1, 10ng/ml添加時にさらに有意に増加した.また,Kupffer細胞をzymosanで刺激するとPGE2産生量は約5倍にも増幅し,TNF存在下ではさらに増強された.さらに,Kupffer細胞をあらかじめTNFで24時間処理したのちzymosanで刺激を加えて産生されるPGE2量もやはり有意に増加した.このように,種々の条件下においてTNFはKupffer細胞からのPGE2産生を増加させることが明らかとなった.しかしながら,IL1にはこのような効果は見られなかった.以上の結果から,Kupffer細胞自身が産生するとされるTNFがKupffer細胞機能を調節する機構が存在する可能性が示唆された.