著者
羽生 春夫 嶺崎 隆幸 大山 満 桝井 武 原田 雅義
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.312-317, 1998-06-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
20

一側脳幹に限局した脳梗塞17例を対象に,SPECTによる脳血流量の左右差を指標として大脳,小脳半球に及ぼす影響を検討した.大脳半球の血流低下がみられたのは7例で,中脳から橋上部までの病巣では同側に,橋中部から延髄における病巣では対側に認められ,これらの病巣はすべて脳幹被蓋を含む病巣であった.小脳半球の血流低下は6例にみられ,橋中部から下部を境に上方(吻側)の病巣では対側に,下方(尾側)の病巣では同側にみられ,脳幹腹側の病巣で認めやすい傾向にあった.大脳半球の血流低下は発症後1~2カ月以内に認められたが,小脳半球の血流低下は数カ月以降の慢性期にまで認められることも少なくなかった.臨床症状との関連は不明であるが,脳幹に限局した小病変でも遠隔領域に血流低下が出現する場合があり,この機序として脳幹を上行,下行する投射線維を介した抑制機序,すなわちdias-chisisとの関連が推測された.