著者
田原 英一 斉藤 大直 川上 義孝 荒川 龍夫 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.351-356, 2002-07-20
被引用文献数
2 1

療養型病床群で老人の夜間不隠行動に,酸棗仁湯が奏効した症例を経験した。症例1は97歳,女性。誤嚥性肺炎を繰り返し,夜間奇声を上げるようになり,当院へ転院。特に夜間病棟中に響きわたる奇声を上げ続けた。酸棗仁湯(TJ-103)7.5gを投与開始後,体位変換,オムツ交換などの際に短時間奇声を上げるだけとなった。その後嚥下訓練を行い,経口摂取が再開できた。症例2は80歳女性。脳出血後後遺症で当院へ転院。夜になると大声を上げるようになった。酸棗仁湯投与後,夜間睡眠が良好となり,日中はリハビリなどで過ごせるようになった。高齢者が増加し痴呆による問題行動に対して対応が苦慮される中で,高齢者の夜間せん妄の中に酸棗仁湯が適応となる病態が存在する可能性が示唆される。
著者
田原 英一 斉藤 大直 川上 義孝 荒川 龍夫 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1-2, pp.63-69, 2002-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7

療養型病床群で釣藤散投与を契機に経管栄養から経口摂取が可能となったと考えられる症例を経験した。症例1は84歳, 男性。誤嚥性肺炎の後, 寝たきり, 胃瘻状態で当院へ転院。入院時は会話もほとんど不能であったが, 釣藤散 (TJ-47) を投与開始後, 意欲の向上が見られ, その後嚥下訓練を行い, 経口摂取が再開となった。症例2は99歳女性。大腿骨骨折術後, 経鼻経管栄養状態で当院へ転院。経口摂取に対して拒否的であったが, 釣藤散投与開始後徐々に経口摂取が可能となった。症例3は84歳女性。誤嚥性肺炎の後, 寝たきり, 経鼻経管栄養状態で当院へ転院。左大転子部に褥瘡形成を認め, しばしば発熱があったが, 釣藤散投与後意欲の改善を認め, 嚥下訓練と合わせて経口摂取が可能となった。また経口摂取に伴い, 褥瘡も治癒した。高齢者の経管栄養からの離脱に際し, 釣藤散は試みられて良い方剤と考えられた。