著者
井上 克也 菊地 耕一 岸根 順一郎 秋光 純 山口 兆 美藤 正樹 川上 貴資
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

井上:新規キラル磁性体2種を新たに合成した。うち3つのキラル磁性体の磁気構造を中性子線回折、下の美藤らの研究による高調波磁化率の検討により明らかにした。秋光:無機系透明chiral磁性体CuB_2O_4および新しいキラル無機磁性体Crl/3NbS2等のの大型単結晶の作成に成功し、磁化の特異な磁場・温度依存性を観測した。この磁化の振る舞いは、岸根らのchira1ソリトン格子モデルによって統一的に理解され、chiral磁性体特有の磁化過程を明らかにすることができた。菊地:グリーンニードルの単結晶を加圧することにより、螺旋軸の一つが消失することが判明した。このことは加圧によってchiralityを制御できることを意味し、この過程を詳細に調べた。美藤:各キラル磁性体について交流磁化率における高調波成分の精密測定および解析を集中的に進めた結果、chiral磁気構造に特徴的な空間反転対称性の破れを直接検出し、磁気構造の詳細を明らかにした。山口、川上:本年度は化学反応における軌道、スピン、電荷、およびカイラル対称性の破れとその回復について研究を進めた。まず、電子相関効果の強い電子系を有する分子系の構造最適化法として対称性の破れた密度汎関数法(DFT)に近似スピン射影により対称性の回復を行ったエネルギー勾配法(AP-OPT)を開発し、ヘモシアニン酵素の活性サイトである二核銅酸化物錯体の構造最適化に適用しその有効性を確立した。さらに、RBS法により反応の状態相関図を求め、局所的スピンクロスオーバー現象などを解明した。また、4鉄イオウ錯体では酸化還元ポテンシャルに対する水素結合効果も検討した。さらに、カイラル対称性に関与するDMパラメータの計算を実行した。岸根:chiral磁性特有の磁場・温度誘起ソリトン格子形成が磁化過程に及ぼす影響を明らかにした。さらに、ソリトン格子のダイナミクス、特異なスピン波物性を、実験研究との密接な連携を保ちながら調べた。
著者
川上 貴資
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.234-237, 2018-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
5

光合成(PSII)の酸素発生錯体(OEC)で機能するCaMn4O5 クラスターの分子軌道計算では,UB3LYP (およびUB3LYP*(HF:15%), UB3LYP**(10%)など)が適用され,実験事実の解析に効果的である.このhybrid DFT 法の 精度を検証するには,最新の高精度計算手法を適用する必要がある.単核Mn モデルでの結果を報告する.