著者
松山 優治 川上 高志 北出 裕二郎 石丸 隆 杉山 正憲
出版者
東京海洋大学(水産)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は沿岸の環境保全や持続的な利用を目指し、大学の研究者、民間会社の技術者、海洋現場担当者が共同で沿岸環境モニタリングシステムの開発と海洋現場への応用に取り組んだものである。その結果、廉価で、耐久性に富んだ、通信費用が安価で、環境に易しい装置の開発に成功した。環境の急変を告知するシステムで、環境変化に迅速に対応できる。2001年7月から内浦湾の養殖施設に設置し、10m深のデータを10分ごとに計測し、E-mailにて関係機関にデータが転送される実験を開始した。日付、時刻、pH、伝導率、濁度、酸素濃度、水温、水深、塩分などを1日4回送信し、通信には成功した。しかし、センサーへの生物付着の影響が激しく、溶存酸素量、濁度、塩分などに現われたことから、(1)緊急性を要する底層貧酸素水の湧昇予報システムには多層水温センサー(5〜10層)を開発して対応し、(2)生物付着の問題を解決するため、現場での付着実験を繰り返し、並行してセンサーの開発により、改善を目指した。2003年には3点での環境モニタリングにまで展開し、水温アレー・センサーと水質計を有効に使って、内部潮汐による湧昇と外洋水の進入に伴う急変現象の解析に成功した。現在、20箇所にデータをリアルタイムに近い状態で送信し、漁業者に利用されている。一方、モニタリング観測と並行して、夏季に湾内の環境調査を実施し、近傍でのCTD, ADCP観測から水温・流速の鉛直構造の時間変化、微細構造観測による鉛直拡散係数の見積もりなどを行ってきた。湾内の海底地形の急変部での内部潮汐波の散乱による空間スケールの小さな内部波への移行、内部波による密度逆転現象、内部潮汐に伴って発生する恒流などを明らかにしてきた。これらの物理現象の把握は湾内の海水交換や海水混合を考える上で不可欠であり、研究を進めている。