著者
松山 優治 青田 昌秋 小笠原 勇 松山 佐和
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.333-338, 1999-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
8 13

Seasonal variation of Soya Current along the Hokkaido coast in the Sea of Okhotsk was investigated both by the long-term current record obtained at the moored station off Sarufutsu and adjusted sea level record at the tidal stations along the Hokkaido coast. The current record shows significant seasonal variation, i.e., strong in summer and weak in winter. The current variation is closely correlated with the sea level difference between by high sea level in the Japan Sea compared with that in Sea of Okhotsk, while the weak current in winter is due to small difference of the sea level between both seas. This fact strongly depends on the unique seasonal variation of the sea level along the Hokkaido coast in the Sea of Okhotsk, i.e., maximum in winter and minimum in spring. The high sea level in winter is retained by the low salinity water in the subsurface layer of the southern part of the Sea of Okhotsk (Ito, 1997) and found along the southern coast of Hokkaido. The interannual variation of sea level along the Hokkaido coast in the Sea of Okhotsk in winter correlates with the Monsoon-Index (MOI) variation defined as difference of atmosphere pressure between Irkutsk in Russia and Nemuro in Hokkaido.
著者
松山 優治 当麻 一良 大脇 厚
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.63-74, 1990-08-31

東京湾の青潮の発生と伝播に関する数値実験を行った.観測に依れば,青潮は成層期に下層の貧酸素水が表面近くまで上昇することにより起こり,下層水の湧昇には北よりの風が寄与しているとされている.実験では湾奥から湾口に向かう風(北東風)を与えた時,千葉県側の湾東部と湾奥部に湧昇が現れ,風が止むと湧昇域は沿岸に沿って反時計周りに移動することが示された.また移動速度は内部ケルビン波の位相速度と一致していた.風の連吹時間を長くすると,湧昇は強くなるが,風の止んだ後の湧昇の移動速度は変わらない.また,夏季に比べて初秋は北よりの風の頻度が増えること,さらに成層が弱くなることから,湧昇が起こり易く,移動速度も遅いことから青潮に長時間さらされる湾奥の千葉や船橋では被害は大きくなることが解った.
著者
松山 優治 岩田 静夫 前田 明夫 鈴木 亨
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.4-15, 1992-08-29
被引用文献数
3

相模湾では時々,急潮が発生し,沿岸に設置された定置網に破損・流失という甚大な被害を与える.本研究では急潮を三例紹介し,その特徴について報告する.二例は沿岸域で急激な水温上昇と水位上昇を伴い,岸を右に見ながら湾を反時計回りに移動することが示された.観測点間の上昇の時間的なズレから,水温変化の移動速度は0.6〜1.0m/sで,水位変化の移動速度は2.0〜3.0m/sと推算された.二例のうち一例(1975年4月23日の急潮)は,黒潮の相模湾への接近が原因と考えられた.他の一例(1988年9月18日の急潮)は台風通過に伴うエクマン輸送で沖合水が沿岸に蓄えられ,それが移動したと推論された.発生原因は異なるが伝播特性は非常によく似ており,水温変化は非線形の内部ケルビン波あるいは回転系での沿岸密度流として,また水位変化は陸棚波の移動として考えると説明ができる.もう一例は反時計回りの循環流に半日周期の内部潮汐が重なって強い流れとなって,網の流失を引き起こした.最大流速は0.8m/sを越え,60m深での水温変化の全振幅は8℃にも達した.
著者
井桁 庸介 北出 裕二郎 松山 優治 Yosuke Igeta Yujiro Kitade Masaji Matsuyama 東京海洋大学海洋科学部 東京海洋大学海洋科学部 東京海洋大学海洋科学部 Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.441-458, 2005-05-05
参考文献数
17
被引用文献数
4

海岸・海底地形が沿岸捕捉波の伝播におよぼす影響について, 簡単な地形を用いた数値実験により研究した。狭い陸棚を持つ深い湾へ伝播する場合には, 岸に沿う風で発生した内部ケルビン波型の沿岸捕捉波は, ほとんど分裂せず湾内へ伝播する。一方, 陸棚が湾口の外側まで張り出す浅い湾へ伝播する場合には, 沿岸捕捉波は湾内へ進入する内部ケルビン波と, 陸棚に沿って湾口沖を伝播する陸棚波型沿岸捕捉波に分かれて, 波形が変化した。これらの特徴は, 沿岸捕捉波による日本南岸各地での潮位変動を良く説明している。陸棚幅が広い場合には, 岸に沿う風により陸棚波が発生するが, 浅い湾の湾口で分裂せずに陸棚端に沿って伝播した。また, 湾口の陸棚に沿って伝播する陸棚波型沿岸捕捉波は, 陸棚の途切れを跳び越えて伝播し, その振幅は途切れ幅が狭くなるに従い大きくなることが確認された。さらに, 湾の幅がロスビーの内部変形半径の2倍より狭い場合, 湾口で分離して湾内へ入射する内部ケルビン波の一部が湾口を跳び越えることが明らかになるとともに, その振幅は湾口幅が狭くなるに従い大きくなることが判明した。Numerical experiments using a two-layer model with simple topography were performed to investigate the scattering of a coastal-trapped wave (CTW) generated by alongshore winds. In the case of a narrow shelf with a deep bay, an internal Kelvin-type wave propagated into the deep bay without wave separation and mode conversion. However, in the case of a narrow shelf with a shallow bay, the internal Kelvin-type wave separated at the bay mouth into two types of waves, a shelf wave and an internal Kelvin wave. The shelf wave propagated along the shelf edge off the bay mouth, while the internal Kelvin wave propagated into the shallow bay. The sea level fluctuations along the southeast coast of Japan that were caused by typhoon 8818 were well explained by the separation and mode conversion process of CTW. In the case of a wide shelf with a shallow bay, a generated shelf wave was propagated along the shelf edge without separation at the bay mouth. In cases with a disconnection of shelf, the shelf wave was found to bridge over the disconnection of shelf and the amplitude of the bridged wave decreased exponentially with increasing disconnection length. Most of the internal Kelvin-type wave bridged over the bay mouth when the width of the bay mouth was shorter than twice the internal radius of deformation.
著者
松山 優治 川上 高志 北出 裕二郎 石丸 隆 杉山 正憲
出版者
東京海洋大学(水産)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は沿岸の環境保全や持続的な利用を目指し、大学の研究者、民間会社の技術者、海洋現場担当者が共同で沿岸環境モニタリングシステムの開発と海洋現場への応用に取り組んだものである。その結果、廉価で、耐久性に富んだ、通信費用が安価で、環境に易しい装置の開発に成功した。環境の急変を告知するシステムで、環境変化に迅速に対応できる。2001年7月から内浦湾の養殖施設に設置し、10m深のデータを10分ごとに計測し、E-mailにて関係機関にデータが転送される実験を開始した。日付、時刻、pH、伝導率、濁度、酸素濃度、水温、水深、塩分などを1日4回送信し、通信には成功した。しかし、センサーへの生物付着の影響が激しく、溶存酸素量、濁度、塩分などに現われたことから、(1)緊急性を要する底層貧酸素水の湧昇予報システムには多層水温センサー(5〜10層)を開発して対応し、(2)生物付着の問題を解決するため、現場での付着実験を繰り返し、並行してセンサーの開発により、改善を目指した。2003年には3点での環境モニタリングにまで展開し、水温アレー・センサーと水質計を有効に使って、内部潮汐による湧昇と外洋水の進入に伴う急変現象の解析に成功した。現在、20箇所にデータをリアルタイムに近い状態で送信し、漁業者に利用されている。一方、モニタリング観測と並行して、夏季に湾内の環境調査を実施し、近傍でのCTD, ADCP観測から水温・流速の鉛直構造の時間変化、微細構造観測による鉛直拡散係数の見積もりなどを行ってきた。湾内の海底地形の急変部での内部潮汐波の散乱による空間スケールの小さな内部波への移行、内部波による密度逆転現象、内部潮汐に伴って発生する恒流などを明らかにしてきた。これらの物理現象の把握は湾内の海水交換や海水混合を考える上で不可欠であり、研究を進めている。
著者
大槻 晃 橋本 伸哉 土屋 光太郎 佐藤 博雄 吉田 次郎 和田 俊 石丸 隆 松山 優治 前田 勝 藤田 清 森永 勤 隆島 史夫 春日 功 鎌谷 明善 村野 正昭 多紀 保彦 平野 敏行 白井 隆明 荒川 久幸 兼廣 春之 平山 信夫
出版者
東京水産大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本研究はROPME-IOCの要請に答えるものとして計画された。本年度の主目的は、調査海域を更に広げて昨年と同様な継続的な観測を行うと共に、ROPME側から要望のあったホルムズ海峡における流向・流速の係留観測を再度試みることであったが、ROPME側で係留流速計の調達が出来なかったこともあり、急きょ底生動物採取等に時間を割り振ることになった。又本年度は、最終年度となるため、ROPME事務局のあるクウェートに入港するこを計画した。本研究グループは、研究練習船「海鷹丸」を利用する海域調査班(研究者7名、研究協力者8名)と車で海岸を調査する陸域調査班(研究者4名)とに分かれて行動した。海域班としては、ROPME事務局が計画した調査航海事前打ち合わせ会(9月26〜27日)に、研究代表者と「海鷹丸」船長2名がクウェートに赴き航海計画、寄港地、ROPME側乗船人数等を伝え、要望事項を聴取した。陸域調査班は、10月28日成田を出発し、バハレーンを経て、クウェートに入り、車を利用して海岸に沿って南東に下り、サウジアラビアのアルジュベールで調査を終了し、11月7日に帰国した。各地点で原油汚染・被害の聞き取り調査、研究試料・魚類試料の収集、水産物の流通・利用の調査を行った。海域調査班は、11月15日に遠洋航海に出発する「海鷹丸」に調査研究器材を積載し、アラブ首長国連邦アブダビ港で乗船すべく12月11日成田を出発した。シンガポールを経て、アブダビに到着、13日には「海鷹丸」に乗船し、器材の配置等研究航海の準備を行った。12月14日ROPME側研究者14名(クウェート4名、サウジアラビア7名、アラブ首長国連邦1名、オマーン1名、ROPME事務局1名。尚、カタールから1名乗船予定であったが出港時間迄に到着しなかった)をアブダビ港で乗船させ、12月15日朝調査を開始するため、出港した。先ず、ホルムズ海峡付近に向かい、1993年に調査した最もホルムズ海峡側の断面から調査を行い、徐々に北上、アラビア湾中部海域に向った。アラブ首長国連邦クワイアン沖からサウジアラビア・アルジュベール沖までの7断面24地点の調査を行い、12月26日予定より1日早くクウェートに入港し、ROPME側研究者及び日本側研究者全員下船した.調査成果の概要は、以下の通りである。1)全ての地点で、湾内水塊移動及び海水鉛直混合調査のためのCTD観測、溶存酸素及び塩検用試料採取と船上分析を行い、観測データを得た。2)全ての地点で、栄養塩測定用試料採取(オルト燐酸イオン、珪酸、アンモニュウムイオン、硝酸塩、亜硝酸塩)を行い、更にそれらの船上分析を行い、観測データを得た。3)海水中の原油由来の溶存微量炭化水素分析用の試料採取、及び船上抽出を行った。4)全ての地点で、底泥の採取に成功した。5)全ての地点で、ボンゴネット及びプランクトンネットによる動・植物プランクトンの採取を行い、幾つかの地点で基礎生産力の測定を行った。6)全ての地点で、海水の光学的特性と懸濁粒子の分布調査を行った。7)全ての停泊地点で、3枚網、籠網、縦縄、釣りによる魚類採取を行う予定であったが、航海後半の悪天候の為、前半に6調査地点に限られた。8)全ての地点で、稚魚ネット引きを行い試料を得た。12月27日には、ROPME事務局関係者2名、日本側研究者7名及び、ROPME研究者7名が参加し、ROPME事務局において、「海鷹丸」による調査結果を主体とした成果発表会をどのように行うか検討会がもたれた。その結果、1995年12月5〜8日まで東京水産大学で行うことが決定した。12月30日クウェート空港を出発し、シンガポール経由で12月31日参者全員帰国した。