著者
川俣 恵利
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-23, 1976 (Released:2007-07-05)
参考文献数
36
被引用文献数
1

当場果樹園に栽植中のナシに光化学スモッグによる被害と思われる症状が見られたので, その被害症状について環境バクロ室で発生した被害を参考にして調べた.1. ナシの徒長枝上の生育旺盛な葉にクロロシス, 褐変およびネクロシス (壊死) の症状が認められた.2. 被害を受けた葉は全クロロフィル, クロロフィルbが著しく減少した. また, 軽症葉ではデンプンが蓄積し, 被害が進行するにつれデンプンは徐々に崩壊した.3. 軽症葉ではO3吸収量は著しく増加したが, CO2放出量はやや増加した程度で, RQは健全葉より低かつた. 重症葉でもO2吸収量は増加したが, CO2放出量が減少したため, RQは健全葉の1/2程度であつた.4. 被害葉の無機成分含量は全般的に減少しており, なかでもNおよびMgは軽症でも著しく減少していた. しかし, 重症になるとP, K, Mgはあまり変化がみられなかつたのに対し, NとCaは減少が続いた.5. 被害により著しく減少したRQと全クロロフィル, クロロフィルaおよびbとの間には極めて高い正の相関がみられた. またNと全クロロフィル, Caと全クロロフィル, NとRQ, CaとRQとの間にも0.1%レベルの正の高い相関が認められた.6. 被害症状はオゾンないしPANによるものと類似しているように思われたが, 東京の光化学スモッグは亜硫酸ガスおよび粉じんが多く含まれ, 一酸化炭素や窒素酸化物が低い傾向にあり, 光化学反応のメカニズムが解明されていない現状では, 原因物質について明らかな確証を得るまでには至らなかつた.
著者
吉田 心 佐藤 慎太郎 川俣 恵利華 川俣 幸一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.27-36, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,保護者自身への食塩摂取意識と子どもへ向けられる意識との関係を明らかとし,効果的な食育活動に繋がる保護者側の因子を探ることであった。【方法】対象は宮城県の子育て広場に通う103人の幼児とその保護者であった(親の平均年齢34.6歳,子どもの平均年齢2.7歳)。親自身の食塩量に関する意識を問う14項目,それと対になる子どもへの食塩量に関する意識を問う14項目のアンケート調査を実施した。結果は単純集計後,二項ロジスティック回帰分析を実施するために因子分析にて総合数値を求めた。【結果】子どもへの食塩量の意識と,親自身の食塩量の意識を比較したところ,14項目中12項目で意識の違いが見られた。因子分析後に実施した保護者と子どもの年齢,保護者の性別,アンケート13項目とで調整した二項ロジスティック回帰分析の結果では,味の付いたご飯,ルーのかかったご飯,スナック菓子の食塩量について有意な回帰式が得られた(それぞれp=0.024,p=0.044,p=0.011)。【結論】子どもへ向けられる食塩摂取量の意識と親自身の食塩摂取量の意識については全ての項目で有意な正の相関を示し,殆どの項目で子どもに向けられた意識の方が親自身の意識よりも有意に高かった。また多変量解析の結果,子育てのための食塩指導を親向けに開催する場合,味の付いたご飯,ルーのかかったご飯,スナック菓子の食塩量について指導することが,効果的な食育活動の一つとなることが示唆された。
著者
佐藤 慎太郎 川俣 恵利華 川端 真由美 半澤 真喜子 川俣 幸一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.264-271, 2020-12-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
36

【目的】高齢者筋力向上トレーニング(以下,高齢者筋トレ)後に,たんぱく質を摂取させる取り組みは広く行われているが,効果が一律とならないことは知られている。今回我々は,軟化した食材を用いた栄養介入が高齢者筋トレの効果を高めるのか検証した。【方法】仙台市在住の一般高齢者15名(平均76.3歳)を無作為に二群に分け,両群に3ヶ月間の介護予防運動教室を実施し,介入前後の数値を比較した。各回の教室の後半に,一方の群には軟化した豚肉 50 gを,もう他方の群には普通のボイル豚肉 50 gを,すみやかに摂取させた。【結果】両群ともに3ヶ月の運動教室を経験しているため介入前後で有意な改善を示した運動機能値が存在した。そこで主成分分析により総合数値を求め,介入前後の結果を比較した。その結果,第1主成分「運動機能」得点において軟化豚肉群では有意な増加が見られた。このような傾向は普通豚肉群では確認されなかった。【結論】今回の我々の結果は,高齢者筋トレ運動後に吸収性を良くした食材をすみやかに食べることが,筋トレ効果の更なる増強を導く可能性を示唆した。
著者
川俣 恵利
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-23, 1976
被引用文献数
1

当場果樹園に栽植中のナシに光化学スモッグによる被害と思われる症状が見られたので, その被害症状について環境バクロ室で発生した被害を参考にして調べた.<br>1. ナシの徒長枝上の生育旺盛な葉にクロロシス, 褐変およびネクロシス (壊死) の症状が認められた.<br>2. 被害を受けた葉は全クロロフィル, クロロフィルbが著しく減少した. また, 軽症葉ではデンプンが蓄積し, 被害が進行するにつれデンプンは徐々に崩壊した.<br>3. 軽症葉ではO<sub>3</sub>吸収量は著しく増加したが, CO<sub>2</sub>放出量はやや増加した程度で, RQは健全葉より低かつた. 重症葉でもO<sub>2</sub>吸収量は増加したが, CO<sub>2</sub>放出量が減少したため, RQは健全葉の1/2程度であつた.<br>4. 被害葉の無機成分含量は全般的に減少しており, なかでもNおよびMgは軽症でも著しく減少していた. しかし, 重症になるとP, K, Mgはあまり変化がみられなかつたのに対し, NとCaは減少が続いた.<br>5. 被害により著しく減少したRQと全クロロフィル, クロロフィルaおよびbとの間には極めて高い正の相関がみられた. またNと全クロロフィル, Caと全クロロフィル, NとRQ, CaとRQとの間にも0.1%レベルの正の高い相関が認められた.<br>6. 被害症状はオゾンないしPANによるものと類似しているように思われたが, 東京の光化学スモッグは亜硫酸ガスおよび粉じんが多く含まれ, 一酸化炭素や窒素酸化物が低い傾向にあり, 光化学反応のメカニズムが解明されていない現状では, 原因物質について明らかな確証を得るまでには至らなかつた.