著者
赤松 隆 佐藤 慎太郎 Nguyen Xuan Long
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.605-620, 2006 (Released:2006-12-20)
参考文献数
23
被引用文献数
26 27

混雑料金制は,理論的には,交通渋滞問題に対する優れた方策である.しかし,その制度の有効な実施に不可欠な(1)利用者情報(需要関数)の正確な推定や(2)渋滞メカニズム(ボトルネック混雑)を考慮した動的料金の設定は,実際には非常に難しい.そこで本稿では,混雑料金制度に代わるTDM施策として,“ボトルネック通行権取引制度”を提案する.そして,この制度の導入により,確実に渋滞が解消するのみならず,通行権取引市場で適切な通行権価格体系が実現し,社会的に最適な状態となることを示す.さらに,その証明を通じて,提案した通行権の設定・取引問題と住宅立地均衡問題の数理的同型性を明らかにする.
著者
佐藤 慎太郎
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.701-722, 2005-12-30 (Released:2017-07-14)

本稿は宗教学の問い直し(「宗教学とはいかなる学問か」)の試みの一つとして、M・エリアーデの宗教学を考察の対象とするものである。特に彼はその研究における鍵概念として「聖なるもの」を置いており、この概念との関係からその視点を浮き彫りにすることを試みる。そこには近代西洋世界の救済への切迫した危機意識を看取できる。彼の宗教学においてはヒエロファニー論にしてもhomo religiosus概念であっても、最終的な帰結までもってゆけば、必ず近代西洋の問題に対してポジティブな可能性を開くものとして主張されていた。すなわち彼の宗教学には意味の次元の開示による、客観性や実証性という原理では取りこぼしてしまう、非聖化を迎えた近代西洋社会において果たしうる文化的役割がいわば確信犯的に強調されていることを確認する。
著者
佐藤 慎太郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究計画では、ヒトノロウイルス(HuNoV)ワクチン開発を念頭に置き、その抗原としてウイルス様粒子と、これまでは検討することができなかった不活化全粒子の優位性を比較するとともに、投与経路として注射型と経粘膜型の優位性も比較検討する。実験には申請者らが最近樹立に成功したヒトiPS細胞株由来の腸管上皮細胞と、この細胞で増殖、精製したHuNoVの感染性粒子を用いる。免疫担当細胞のHuNoV認識における、抗原取り込みに特化した上皮細胞であるM細胞の関与を検討し、経粘膜型ワクチンにおいてM細胞に標的化することの有用性も検討する。
著者
吉田 心 佐藤 慎太郎 川俣 恵利華 川俣 幸一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.27-36, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,保護者自身への食塩摂取意識と子どもへ向けられる意識との関係を明らかとし,効果的な食育活動に繋がる保護者側の因子を探ることであった。【方法】対象は宮城県の子育て広場に通う103人の幼児とその保護者であった(親の平均年齢34.6歳,子どもの平均年齢2.7歳)。親自身の食塩量に関する意識を問う14項目,それと対になる子どもへの食塩量に関する意識を問う14項目のアンケート調査を実施した。結果は単純集計後,二項ロジスティック回帰分析を実施するために因子分析にて総合数値を求めた。【結果】子どもへの食塩量の意識と,親自身の食塩量の意識を比較したところ,14項目中12項目で意識の違いが見られた。因子分析後に実施した保護者と子どもの年齢,保護者の性別,アンケート13項目とで調整した二項ロジスティック回帰分析の結果では,味の付いたご飯,ルーのかかったご飯,スナック菓子の食塩量について有意な回帰式が得られた(それぞれp=0.024,p=0.044,p=0.011)。【結論】子どもへ向けられる食塩摂取量の意識と親自身の食塩摂取量の意識については全ての項目で有意な正の相関を示し,殆どの項目で子どもに向けられた意識の方が親自身の意識よりも有意に高かった。また多変量解析の結果,子育てのための食塩指導を親向けに開催する場合,味の付いたご飯,ルーのかかったご飯,スナック菓子の食塩量について指導することが,効果的な食育活動の一つとなることが示唆された。
著者
佐藤 慎太郎 川俣 恵利華 川端 真由美 半澤 真喜子 川俣 幸一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.264-271, 2020-12-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
36

【目的】高齢者筋力向上トレーニング(以下,高齢者筋トレ)後に,たんぱく質を摂取させる取り組みは広く行われているが,効果が一律とならないことは知られている。今回我々は,軟化した食材を用いた栄養介入が高齢者筋トレの効果を高めるのか検証した。【方法】仙台市在住の一般高齢者15名(平均76.3歳)を無作為に二群に分け,両群に3ヶ月間の介護予防運動教室を実施し,介入前後の数値を比較した。各回の教室の後半に,一方の群には軟化した豚肉 50 gを,もう他方の群には普通のボイル豚肉 50 gを,すみやかに摂取させた。【結果】両群ともに3ヶ月の運動教室を経験しているため介入前後で有意な改善を示した運動機能値が存在した。そこで主成分分析により総合数値を求め,介入前後の結果を比較した。その結果,第1主成分「運動機能」得点において軟化豚肉群では有意な増加が見られた。このような傾向は普通豚肉群では確認されなかった。【結論】今回の我々の結果は,高齢者筋トレ運動後に吸収性を良くした食材をすみやかに食べることが,筋トレ効果の更なる増強を導く可能性を示唆した。
著者
中山 明峰 佐藤 慎太郎
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.91-98, 2016-06-30 (Released:2016-08-01)
参考文献数
41

Dizziness may be caused by multiple factors including unknown reasons. It is well known that insomnia is associated with increased psychological symptomatology and perceived stress, higher predisposition to arousal, and greater impairments to quality of health. The relationship between dizziness and stress is well documented, but that between dizziness and insomnia is unclear. In this series, we focus on Ménière's disease, which is characterized by fluctuating and progressive hearing loss, aural fullness, tinnitus, and intermittent attacks of vertigo, an illusory sensation of movement resulting from dysfunction of the labyrinth and cochlea, to investigate the relation between sleep disorders and dizziness. In our previous report, we first found that the sleep quality of Ménière's disease patients was impaired. Ménière's patients have a longer total sleeping time, lack of deep sleep stages, increased arousal, and the combination with obstructive sleep apnea syndrome and/or periodic limb movement disorder was occasionally noted. Poor quality of sleep may cause additional stress and lead Ménière's disease patients into a negative spiral of symptoms. Furthermore, poor sleep quality may result in Ménière's disease patients being refractory to medical management. Therefore, prospective treatment focusing on the sleep disorders of, not just Ménière's disease but possibly also dizziness symptoms, may become an additional new strategy for terminating the negative spiral of symptoms and reduce exacerbation of the affected patient's conditions.
著者
佐藤 慎太郎
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.701-722, 2005-12-30

本稿は宗教学の問い直し(「宗教学とはいかなる学問か」)の試みの一つとして、M・エリアーデの宗教学を考察の対象とするものである。特に彼はその研究における鍵概念として「聖なるもの」を置いており、この概念との関係からその視点を浮き彫りにすることを試みる。そこには近代西洋世界の救済への切迫した危機意識を看取できる。彼の宗教学においてはヒエロファニー論にしてもhomo religiosus概念であっても、最終的な帰結までもってゆけば、必ず近代西洋の問題に対してポジティブな可能性を開くものとして主張されていた。すなわち彼の宗教学には意味の次元の開示による、客観性や実証性という原理では取りこぼしてしまう、非聖化を迎えた近代西洋社会において果たしうる文化的役割がいわば確信犯的に強調されていることを確認する。