著者
国松 豊 川勝 剛
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.81-85, 1959-09-01

最近養鶏家の間で冬季特に厳寒期に卵黄が硬化し, 卵白との混和が不可能となる卵黄硬化卵(所謂スポンヂ卵)が多数発見されている。筆者等は卵黄硬化卵に関係があると思われるカポツク粕20%添加配合飼料と実際に卵黄硬化卵の産出が見られたと云う配合飼料を用いて卵黄硬化卵の産出試験を行い, 得た卵黄硬化卵についての一般所見, 卵黄の一般化学組成, 卵黄脂肪の特性について調査したのでその結果を報告する。(1) 0°∿3℃で貯蔵した場合, 正常卵の卵黄は硬化しなかつたが, 卵黄硬化卵は明らかに同温度で卵黄が硬化し, 卵白との混和も不可能であつた。又卵黄色も卵黄硬化卵の方が色が濃く橙色を帯びていた。但し温度が上昇すれば除々に軟化し, 間もなく正常卵と同様の性状・色沢を示すに至る。(2)卵黄の一般成分の内水分含量は卵黄硬化卵が正常卵のそれに比してやや低い値を示している。(3)卵黄硬化卵より抽出した卵黄脂肪の沃素価は正常卵のそれに比して低い値を示した。この点恐らく飼料中の飽和脂肪酸を含む油粕類が卵黄脂肪に影響を与えて沃素価を低めたものと思はれる。卵黄脂肪については更に燐脂質或は不鹸化物についての調査が必要であるが, 恐らく飽和脂肪酸を多く含む油粕類が飼料中に添加されると卵黄脂肪中の飽和脂肪酸の割合が多くなり, その結果沃素価の低い, 融点及び凝点の高い脂肪となるため0°∿3℃で卵黄が硬化したものと想像される。