著者
芹澤 昌史 中山 淳 川原林 伸昭
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.1490-1495, 2015 (Released:2015-07-31)
参考文献数
13

症例は75歳の男性.下部消化管内視鏡検査施行にて横行結腸に0-IIc+IIa病変を認めた.粘膜下層への癌の浸潤の可能性が否定できず,また内視鏡の操作性が悪い部位であったため外科的手術で治療する方針とした.しかし,その二カ月半後の手術前日に二回目の内視鏡検査を施行したところ,横行結腸には腫瘍の大部分が存在せず,自然退縮したと考えられた.予定通り手術を行ったが,粘膜の一部と粘膜下組織に小量の癌細胞を認めた.極めて稀な現象である自然退縮を示した結腸癌の一例を報告する.
著者
生田 真一 初瀬 一夫 川原林 伸昭 相原 司 望月 英隆
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1554-1558, 2000-08-01
被引用文献数
1

症例は透析歴10年の48歳の男性.近医で直腸癌を疑われ当科紹介入院となった.術前検査中に黄疸が出現, 精査で肝門部胆管・直腸同時性重複癌と診断された.1998年8月6日, 拡大肝右葉・尾状葉切除, 胆管切除, 左肝管空腸Roux-en-Y吻合術を施行した.術前3日間は連日透析を施行し, 輸血により貧血を補正した.術中出血量は2,950ml, 尿量は0ml, 術中輸液は1号液と5%ブドウ糖液で維持し, 濃厚赤血球6単位, 新鮮凍結血漿(FFP)18単位を輸血した.術後輪液は50%ブドウ糖液とFFPを中心にGI療法を併用して1日1,500ml前後としたが, 心不全, 肝不全徴候は認めず血清K値は正常範囲で経過した.術後透析は48時間後から抗凝固剤にフサン^〓を用いて再開したが出血傾向は認めなかった.術後17週目に直腸癖に対しHartmann手術を施行した.慢性血液透析患者においても周術期管理に留意すれば, 広範囲肝切除などの高度侵襲の手術も重大な合併症なく施行しうると思われた.