著者
神藤 英二 望月 英隆 寺畑 信太郎 古谷 嘉隆 内田 剛史 酒井 優
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.2210-2214, 1997-11-01
被引用文献数
8

盲腸に発生した, 腺癌と偏平上皮癌の成分を含む内分泌細胞癌の症例を経験した. 肉眼的には典型的な2型腫瘍であったが, 組織学的検索から同一腫瘍内に内分泌細胞癌と腺癌の領域を認め, さらに内分泌細胞癌の内部には偏平上皮癌への分化を示す部分を多数認めた. 内分泌細胞癌の診断の過程で行った免疫染色では, neuron-specific enolase に陽性を示したものの, クロモグラニンAには陰性であったため, 電子顕微鏡検査を追加, 内分泌顆粒を認めたことで, 最終的に内分泌細胞癌の診断を得た. 臨床的には悪性度が高く, 肝転移を認めたため肝切除を含む根治度Bの手術を施したが, 残肝再発を来し, 術後9か月目に死亡した. 今回の症例は, 組織学的多様性から, 腫瘍発生母地, およびその分化の過程が注目されるので報告した.
著者
長谷 和生 望月 英隆 横山 幸生 吉村 一克 山本 哲久 中村 栄秀 栗原 浩幸 吉積 司 上野 秀樹 岩本 一亜 玉熊 正悦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.2944-2950, 1992-12-01
被引用文献数
11

直腸癌手術症例297例のホルマリン固定標本を対象に, 癌の肛門側壁内進展について検討した. 壁内進展は67例, 23% に認められ, その最長距離は 3.7cm であった. 壁内進展陽性例は陰性例に比べ治癒切除率 (34% : 77% ; p<0.005), 治癒切除例における再発率 (57% : 25% ; p<0.005), 累積生存率 (p<0.001) など, いずれも有意に不良であり, 壁内進展には予後規定因子としての意義がうかがわれた. 一方癌の肉眼型3型, 低分化腺癌・印環細胞癌,大きさ 6.1cm 以上, 亜全周以上などの病理学的所見を呈するものでは, 2.1cm 以上の壁内進展がそれぞれ高率に認められた (おのおのp<0.005). これら4因子のうち1因子以下しか伴わない症例では 2.1cm 以上の進展は皆無であったが, 2因子以上を伴う症例では11%に認められた (p<0.005). したがってこれらの病理学的因子を2因子以上有する症例では肛門側切離縁までの距離はホルマリン固定標本 4.0cmが望ましく, 1因子以下では 2.0cm で十分と考えられた.
著者
生田 真一 初瀬 一夫 川原林 伸昭 相原 司 望月 英隆
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1554-1558, 2000-08-01
被引用文献数
1

症例は透析歴10年の48歳の男性.近医で直腸癌を疑われ当科紹介入院となった.術前検査中に黄疸が出現, 精査で肝門部胆管・直腸同時性重複癌と診断された.1998年8月6日, 拡大肝右葉・尾状葉切除, 胆管切除, 左肝管空腸Roux-en-Y吻合術を施行した.術前3日間は連日透析を施行し, 輸血により貧血を補正した.術中出血量は2,950ml, 尿量は0ml, 術中輸液は1号液と5%ブドウ糖液で維持し, 濃厚赤血球6単位, 新鮮凍結血漿(FFP)18単位を輸血した.術後輪液は50%ブドウ糖液とFFPを中心にGI療法を併用して1日1,500ml前後としたが, 心不全, 肝不全徴候は認めず血清K値は正常範囲で経過した.術後透析は48時間後から抗凝固剤にフサン^〓を用いて再開したが出血傾向は認めなかった.術後17週目に直腸癖に対しHartmann手術を施行した.慢性血液透析患者においても周術期管理に留意すれば, 広範囲肝切除などの高度侵襲の手術も重大な合併症なく施行しうると思われた.