著者
熊谷 千津 川口 光倫 齋藤 碧
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.10-21, 2018-05-31 (Released:2018-05-31)
参考文献数
21

精油の香りを纏うライフスタイルが人の魅力に与える影響を明らかにするため,二つの実験を行った。一つ目の介入実験では,参加者である女子大学生28名が3群に分かれ,精製水,50%希釈ベルガモット精油,0.5%希釈ローズ精油のいずれかを身につけて約5週間生活を行った。介入期間前後で参加者の不安(STAI, State-Trait Anxiety Inventory),対人的行動特性(NTI-II, Nursery Trait Inventory-II),気分・肌状態の実感を測定した。二つ目の顔画像評価実験では,介入実験参加者の介入期間前後における顔画像を,大学生の男女20名により評定した。介入実験では,ローズ精油群でSTAI特性不安が介入により有意に減少した。また,NTI-IIについては,ローズ精油群で「行動力」,「援助的活動性」,「情緒的受容性」の各平均値が有意に増加した。ベルガモット精油群で気分と肌状態の実感に関する項目,ローズ精油群で肌状態の実感に関する項目が有意に向上した。顔画像評価実験では,ベルガモット精油群で一部の評定項目が介入により有意に向上した一方,ローズ精油群ではすべての評定項目が介入により有意に向上した。また,介入後の顔画像の方を良いと選択した割合が対照群48.1%,ベルガモット精油群61.0%,ローズ精油群77.0%となった。本研究の結果,参加者が継続的に精油の香りを使用することで,内外面の変化とともに顔の魅力度が高まる可能性が示された。
著者
川口 光倫
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.71-82, 2014-09-01 (Released:2014-10-01)
参考文献数
95

気候変動の結果によると思われる森林樹木の成長傾向の変化や集団枯死が近年相次いで報告されており,本総説は近年の論文からそれらの現況と要因についてまとめたものである.気温と降水量は森林生産性を制限する主要因であり,これまでの気温上昇により樹木の成長が増加した一方,乾燥ストレスの相対的な増大による成長の低下も観測された.その他の気候的要因である日射量,そして非気候的要因である大気中の二酸化炭素濃度の上昇,大気汚染物質の排出,さらに生物的・非生物的な撹乱や環境ストレスの傾向変化も複合的に樹木の成長に影響していると思われる.また,樹木において成長速度は,気候変動への応答や寿命と密接に関係することから,気候と森林との関係を示す重要な変数として測定が広く継続されるべきである.現在の日本では森林に対する気候変動の影響が顕著でないものの,今後の研究により実態が明らかになる可能性がある.