著者
熊谷 千津 永山 香織
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.7-14, 2015-10-08 (Released:2015-10-08)
参考文献数
16
被引用文献数
1

小学校高学年児童の計算力と気分に与える精油の影響を明らかにする目的で,ペパーミント油とオレンジ・スイート油を用いてランダム化クロスオーバー比較試験を行った。対象は小学6年生(11,12歳)の男子女子,合計38名であった。対象児童をランダムに2群に分け,ペパーミント油の検証を行う群,オレンジ・スイート油の検証を行う群とした。また,各群ともさらに2群に分け,実験順序による影響を消去するため,ウォッシュアウトの休憩時間を挟み,対照とする精製水と精油の実験順序をクロスオーバーさせた。気分の変化は二次元気分尺度(TDMS-ST),および,VASで評価し,計算力は10分間の百ます計算(1桁,加法)の作業数と誤答数を評価した。さらに,語彙検索力の評価として語想起課題を行った。精油の香り刺激は,精油を滴下したプレートを鼻に近づけ30秒間吸入した後,机上にプレートを置いて芳香浴を持続した。ペパーミント油は,精製水の場合と比較して,集中している,頭がスッキリする,元気がある,の3項目でVASスコアが有意に向上した。オレンジ・スイート油では,精製水の場合と比較して,イライラしていない,やる気がある,不安でない,きびきびしている,頭がスッキリしている,の5項目でVASスコアが有意に向上した。また,TDMS-STでは,オレンジ・スイート油において,活性度,安定度,快適度で有意な向上が確認された。計算力では,百ます計算作業数の平均値は,精製水,ペパーミント油,オレンジ・スイート油の場合ともに変化は見られなかった。誤答数の平均値は,有意差は認められなかったが,ペパーミント油では,精製水の場合の4.2から3.2に24%減少し,オレンジ・スイート油では精製水の場合の4.4から3.2に27%減少した。誤想起課題では,ペパーミント油,オレンジ・スイート油ともに有意な変化は見られなかった。以上のことから,ペパーミント油,オレンジ・スイート油ともに,頭がスッキリするなど,小学生の気分に好影響を与え,計算ミスが減少する傾向があることが明らかとなった。
著者
熊谷 千津 川口 光倫 齋藤 碧
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.10-21, 2018-05-31 (Released:2018-05-31)
参考文献数
21

精油の香りを纏うライフスタイルが人の魅力に与える影響を明らかにするため,二つの実験を行った。一つ目の介入実験では,参加者である女子大学生28名が3群に分かれ,精製水,50%希釈ベルガモット精油,0.5%希釈ローズ精油のいずれかを身につけて約5週間生活を行った。介入期間前後で参加者の不安(STAI, State-Trait Anxiety Inventory),対人的行動特性(NTI-II, Nursery Trait Inventory-II),気分・肌状態の実感を測定した。二つ目の顔画像評価実験では,介入実験参加者の介入期間前後における顔画像を,大学生の男女20名により評定した。介入実験では,ローズ精油群でSTAI特性不安が介入により有意に減少した。また,NTI-IIについては,ローズ精油群で「行動力」,「援助的活動性」,「情緒的受容性」の各平均値が有意に増加した。ベルガモット精油群で気分と肌状態の実感に関する項目,ローズ精油群で肌状態の実感に関する項目が有意に向上した。顔画像評価実験では,ベルガモット精油群で一部の評定項目が介入により有意に向上した一方,ローズ精油群ではすべての評定項目が介入により有意に向上した。また,介入後の顔画像の方を良いと選択した割合が対照群48.1%,ベルガモット精油群61.0%,ローズ精油群77.0%となった。本研究の結果,参加者が継続的に精油の香りを使用することで,内外面の変化とともに顔の魅力度が高まる可能性が示された。
著者
熊谷 千津 山川 義徳
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-7, 2017-08-23 (Released:2017-08-23)
参考文献数
16

われわれは,ゼラニウム精油嗅覚刺激がプレ更年期女性のQOLに与える効果を明らかにする目的で,40代女性30名を対象に実験を行った。ゼラニウム精油は携帯型簡易芳香器を用いて,2月経周期の間,毎日吸入した。介入前後にMRIを撮像し大脳皮質灰白質の量(GM-BHQ),神経線維の異方性(FA-BHQ)を分析した。質問紙はピッツバーグ睡眠調査票,STAI, POMS2, VASを用いて調査した。VASにおいては,若々しさに関する4項目,生活の充足に関する6項目を評価した。解析は,実験開始より前に介入をスタートした2例を除外し28例で行った。介入によって,若々しさが増加したと感じた女性ほどGM-BHQが増加し,アンチエイジング効果が脳構造に反映している可能性が示唆された。さらに,食事が美味しくとれるなどの生活の充足度が低いと感じている女性ほど,ゼラニウム精油の嗅覚刺激によるFA-BHQの改善効果が表れやすいことが示唆された。今後は例数を増やし対照群を設けてプレ更年期のQOLに与えるゼラニウム精油嗅覚刺激の効果を追究していきたい。