著者
鎌田 恭輔 広島 覚 小川 博司 國井 尚人 川合 謙介 安栄 良悟 斉藤 延人
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.296-305, 2014 (Released:2014-04-25)
参考文献数
24

本稿では脳腫瘍摘出手術に役立つ術前機能マッピングと術中機能モニタリングの具体的方法と臨床現場における評価, 信頼性について述べた. 現在術前機能マッピングによる運動野/中心溝局在, および優位半球の同定は現場で十分応用できる. しかし, 言語関連機能MRIの活動部の脳皮質電気刺激による検証では感度は80%, 特異度は60%程度でさらなる改良が必要である. 一方, tractographyは機能している皮質脊髄路と弓状束を正確に反映しているため, 手術計画に有用である. 術中脳機能モニタリング方法としては, 感覚誘発電位, 運動野, 皮質脊髄路電気刺激による運動誘発電位, および覚醒下手術がある. 感覚誘発電位, 皮質刺激運動誘発電位により確実な運動野/中心溝局在の同定が行える. また, 白質刺激運動誘発電位では刺激強度と切除腔と皮質脊髄路tractography間距離に強い相関関係があり, 刺激強度から皮質下構造までの距離を推測することもできる. 覚醒下手術では図形名称課題を用いることで, 効率的に言語皮質, 弓状束を同定・温存できる. 蛍光画像マッピングは悪性腫瘍浸潤領域の同定に有用であるが, さらなる定量的な検討方法の確立が必要である.
著者
川合 謙介
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.331-346, 2011-04-01

はじめに 迷走神経刺激療法(vagus nerve stimulation:VNS)は,てんかんに対する非薬剤治療の1つであり,抗てんかん薬に抵抗する難治性てんかん発作を減少,軽減する緩和的治療である。植込型の電気刺激装置により,左迷走神経を間歇的かつ慢性的に刺激する(Fig.1)。難治性てんかんに対する緩和的な電気刺激療法としては最初に臨床応用されたもので,欧米へ導入されてからおよそ15年が経過した。難治性てんかん発作に対する抑制効果は根治的ではないものの,無作為化二重盲検試験で確認された信頼度の高いものであり1,2),1999年の米国神経学会指針でクラス1エビデンス認定を受けている3)。欧米では,既に長らく薬剤抵抗性で開頭手術の適応もない難治性てんかん発作に対する緩和的治療の重要な選択肢となっている4)。 したがってVNSは,必ずしも新しい治療と呼ぶにはふさわしくないのだが,日本でも2010年1月に薬事承認,7月に保険適応が得られ,ようやく臨床場面での通常使用が可能となった。本稿では,わが国でのこのようなタイミングを踏まえて,VNSの歴史,関連する解剖および生理学的知識,作用機序,治療適応と臨床効果,安全性と副作用,実際に治療を行う場合の注意点などについて概説する。