著者
川島 一夫
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

児童の愛他心の形成における欲求ー価値理論の検討著者は、川島(1989)において、愛他行動の発達における、情況的抑制要因と促進性個人内要因について検討を行い、発達的に2つの異なる要因が影響することを明らかにしてきた。前年度では、その検討結果と、高野(1989)の欲求ー価値理論との関係において、児童の情動反応としての愛他心の形成において、影響する欲求ー価値の関係を調査しクラスタ-分析による検討を行なった。本年度はその結果ににもとづき、2つの実験を行なった。第1実験では、愛他行動の発達の過程において、その動機づけの理由としてどのようなものが影響しているのかについて検討した。そこで検討されたことは、1愛他心についての基準の形成の過程で、社会的あるいは物的な報酬のどちらが各年齢段階で影響しているか。2Mussen(1977)らのいう内面化された動機や自己報酬(内在的報酬)は、どの段階から効果を持つようになるのか。3愛他行動の内在化の過程において緊急度とコストによって分けられた3種の愛他行動は異なった動機の発達をする、ということであった。その結果、寄付行動で、社会的強化を愛他行動の基礎とする児童が増加し、自己強化をその動機であるとする児童は、四年生で最大となり、六年生で減少していることが明らかとなった。第2実験において、欲求ー価値理論に基づいた、児童の愛他行動における要求の認知について検討を行なった。第1実験と同様の絵画を用いて愛他行動場面での要求の認知の検討が行なわれた。その結果、年齢の主効果が有意であった。すなわち、愛他行動の場面での要求の認知は、年齢とともに上昇した。また、愛他行動の種類によって異なる傾向が見られた。すなわち、救助行動は、どの学年においても、要求の認知が高い傾向が見られた。