著者
手納 信一 馬場園 哲也 勝盛 弘三 岩崎 直子 川島 員 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.387-391, 2000-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
25
被引用文献数
2

色素性痒疹は著しい瘋痒を伴う紅色丘疹が発作性に多発し, 後に粗大網目状の色素沈着を残す皮膚疾患である. その発症にケトーシスの関与も示唆され, 糖尿病領域でも注目されている. われわれは, 過去6年間に糖尿病に合併した色素性痒疹を3例経験したので, 文献的考察を含め報告する. 症例は20歳, 15歳および41歳の男性, いずれも糖尿病の発症時にケトーシスと癌痒を伴う紅色丘疹が出現し, インスリン治療開始後, 網状の色素沈着を残し軽快した. 糖尿病と色素痒疹の合併例の報告は本邦で11例と少なく, 偶然合併した可能性も否定できない. しかし, 両疾患においてHLAの交差が存在するので自己免疫機能が発症に関与している可能性も考えられる, 色素性痒疹の発症機序や, ケトーシスとの関連の解明のため, 今後さらなる症例の蓄積が必要である.