著者
永尾 麻紀 佐中 眞由実 手納 信一 野村 馨 肥塚 直美 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 = Journal of the Japan Diabetes Society (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.275-278, 2006-04-30
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は26歳,女性.8歳発症の1型糖尿病患者で妊娠5週に当センターを紹介され初診.HbA<sub>1</sub>c 7.7%でありコントロールのため入院.糖尿病合併症は認められず,血糖コントロール改善したため退院.妊娠11週頃からHbA<sub>1</sub>c 5%台にもかかわらず,口渇,1日4~5<i>l</i>の多飲および多尿が出現.ADH-アルギニンバソプレシン(以下,AVP)0.15 pg/m<i>l</i>と低値であったため,尿崩症の合併が疑われ,妊娠15週に精査のため入院.DDAVP(デスモプレシン)10 &mu;gの試験的投与にて中枢性尿崩症と診断.DDAVP開始後,自覚症状は改善し尿量も約2<i>l</i>/日に減少した.妊娠38週2日,自然分娩にて3,440 gの女児を出産.児は新生児低血糖を認めたが,他の合併症は認めなかった.授乳終了後に行った頭部MRIでは,下垂体後葉のhigh intensity areaの消失が認められた.妊娠中に尿崩症を発症した1型糖尿病合併妊婦の稀有な症例を試験したので報告する.
著者
坊内 良太郎 手納 信一 塚原 佐知栄 田中 伸枝 菅野 宙子 石井 晶子 中神 朋子 川島 眞 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.27-33, 2006 (Released:2008-07-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

後天性反応性穿孔性皮膚症(acquired reactive perforating collagenosis; ARPC)は皮膚表皮への変性膠原線維の排出を特徴とし,糖尿病や慢性腎不全に合併する稀な皮膚疾患である.われわれは血液透析導入後の1型糖尿病に本症を合併し,厳格な血糖コントロールとアロプリノール投与が奏効した症例を経験した.症例は26歳,女性.1986年(9歳)に1型糖尿病を発症.2001年頃から背部と両下肢伸側に〓痒感の強い丘疹が多数出現し,ARPCと診断された.ステロイドおよび抗ヒスタミン薬による局所治療を4年間受けていたが難治性であった.2002年4月慢性腎不全のため血液透析を導入,2004年3月膵腎移植登録目的で入院した.1,800kcal,蛋白40gの食事療法および強化インスリン療法を行い,アロプリノール100mgを開始したところ,約2週間で〓痒感が軽減し,2カ月後には皮疹も減少した.ARPCの発症機序は十分に解明されておらず難治性であることが多いが,本症例では血糖の厳重な管理に加えアロプリノールが奏効したと考えられた.
著者
手納 信一 馬場園 哲也 勝盛 弘三 岩崎 直子 川島 員 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.387-391, 2000-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
25
被引用文献数
2

色素性痒疹は著しい瘋痒を伴う紅色丘疹が発作性に多発し, 後に粗大網目状の色素沈着を残す皮膚疾患である. その発症にケトーシスの関与も示唆され, 糖尿病領域でも注目されている. われわれは, 過去6年間に糖尿病に合併した色素性痒疹を3例経験したので, 文献的考察を含め報告する. 症例は20歳, 15歳および41歳の男性, いずれも糖尿病の発症時にケトーシスと癌痒を伴う紅色丘疹が出現し, インスリン治療開始後, 網状の色素沈着を残し軽快した. 糖尿病と色素痒疹の合併例の報告は本邦で11例と少なく, 偶然合併した可能性も否定できない. しかし, 両疾患においてHLAの交差が存在するので自己免疫機能が発症に関与している可能性も考えられる, 色素性痒疹の発症機序や, ケトーシスとの関連の解明のため, 今後さらなる症例の蓄積が必要である.
著者
宇都 祐子 宇都 健太 手納 信一 磯野 一雄 大森 安恵
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.689-693, 2002-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1

糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) から心停止をきたし, 救命し得たいわゆる劇症1型糖尿病の症例を経験した. 36歳の女性, 叔父が2型糖尿病. 生来健康で健診でも異常はなかった. 2000年7月16日口渇, 全身倦怠感が出現. 18日夕方近医で上気道炎と診断されたが, 19日午前5時頃呼吸困難が出現. 救急車で当院初診. 意識障害と心室頻拍を認め, その後心停止に至るも心肺蘇生を行い救命. 血糖2, 06gmgdl, 総ケトン体11, 070μmoll, pH6.8, HCO3 3.8mmoll, K7.0mmEqlからDKAと診断. HbA1c 6.6%, 抗GAD抗体およびICAは陰性. グルカゴン負荷試験, 尿中CPRからインスリン分泌は枯渇しており, 総インスリン量42U日でコントロールし得た劇症1型糖尿病と考えられた.感冒様症状で来院した患者でも, 劇症1型糖尿病に対する注意が必要であると考えられた.