著者
安芸 菜奈子 松下 玲子 三浦 順之助 柳沢 慶香 佐倉 宏 八辻 賢 橋本 悦子 白鳥 敬子 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.771-776, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
12

症例は55歳女性.19歳時,下垂体腺腫摘出術を施行.術後,ホルモン補充療法が行われたが,数年後に治療中断.48歳時,糖尿病を指摘されたが放置.55歳時,再度HbA1c 10.8%とコントロール不良の糖尿病を指摘され当科入院.入院時,高脂血症,肝機能障害の合併および,内分泌検査で成長ホルモン分泌不全,中枢性性腺機能低下症,甲状腺機能低下症を認めた.画像診断では,肝の変形,脾腫,脾腎シャントを認めた.肝機能障害の原因は,ウイルス,自己免疫,アルコール性は否定的であり,肝生検を施行し非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH), 肝硬変と診断した.血糖コントロールは超速効型インスリンの投与で改善した.本症例は下垂体腺腫摘出術後GH分泌不全状態にあったが,長期間にわたりホルモン補充療法が行われなかったため,NASHを発症し,肝硬変まで進展したと推測された.
著者
糖尿病診断基準に関する調査検討委員会 清野 裕 南條 輝志男 田嶼 尚子 門脇 孝 柏木 厚典 荒木 栄一 伊藤 千賀子 稲垣 暢也 岩本 安彦 春日 雅人 花房 俊昭 羽田 勝計 植木 浩二郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.450-467, 2010 (Released:2010-08-18)
参考文献数
54
被引用文献数
11

概念:糖尿病は,インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし,種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である.その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与する.代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすく,動脈硬化症をも促進する.代謝異常の程度によって,無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示す.
著者
堀田 饒 中村 二郎 岩本 安彦 大野 良之 春日 雅人 吉川 隆一 豊田 隆謙
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.47-61, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
10
被引用文献数
24

アンケート調査方式で,全国282施設から18,385名が集計され,1991∼2000年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した.18,385名中1,750名が剖検例であった.1) 全症例18,385名中の死因第1位は悪性新生物の34.1%であり,第2位は血管障害(糖尿病性腎症,虚血性心疾患,脳血管障害)の26.8%, 第3位は感染症の14.3%で,糖尿病性昏睡は1.2%であった.悪性新生物の中では肝臓癌が8.6%と最も高率であり,血管障害の中では糖尿病性腎症が6.8%に対して,虚血性心疾患と脳血管障害がそれぞれ10.2%と9.8%とほぼ同率であった.虚血性心疾患のほとんどが心筋梗塞であり,脳血管障害の内訳では脳梗塞が脳出血の2.2倍であった.2) 剖検例において死亡時年齢から糖尿病患者の死因をみると,血管障害全体では年代が上がるにつれて頻度が高くなるが,腎症および脳血管障害の頻度には40歳代以上では年代による大きな差は認められなかった.しかしながら,虚血性心疾患は年代の上昇に伴って増加し,50歳代以上では他の血管障害に比して頻度が高く,70歳代では血管障害全体の約50%を占めていた.悪性新生物は,40歳代以上の各年代で最も高く,60歳代においては46.3%と極めて高頻度であった.また,感染症による死亡には40歳代以上の各年代で大きな差はなかった.3) 血糖コントロールの良否が死亡時年齢に及ぼす影響をみると,血糖コントロール不良群では良好群に比し,男性で2.5歳,女性で1.6歳短命であり,その差は悪性新生物に比し血管合併症とりわけ糖尿病性腎症と感染症で大きかった.4) 血糖コントロール状況および糖尿病罹病期間と血管障害死の関連を検討すると,糖尿病性腎症,虚血性心疾患,脳血管障害ともに血糖コントロールの良否との関連性は認められなかった.罹病期間に関しては,大血管障害は細小血管障害である糖尿病性腎症と比較して糖尿病歴10年未満でも頻度が高かった.5) 治療内容と死因に関する検討では,食事療法単独21.5%, 経口血糖降下薬療法29.5%, 経口血糖降下薬の併用を含むインスリン療法44.2%とインスリン療法が最も多く,とりわけ糖尿病性腎症では1,170名中683名58.4%を占め,虚血性心疾患での1,687名中661名39.2%, 脳血管障害での1,622名中659名40.6%に比べて高頻度であった.6) 糖尿病患者の平均死亡時年齢は,男性68.0歳,女性71.6歳で同時代の日本人一般の平均寿命に比して,それぞれ9.6歳,13.0歳短命であった.前回(1981∼1990年)の調査成績と比べて,男性で1.5歳,女性で3.2歳の延命が認められたが,日本人一般においても男性1.7歳,女性2.7歳の延命が観察されており,糖尿病の管理・治療が進歩したにも拘らず,患者の生命予後の改善に繋がっていないことが明らかとなった.
著者
清野 裕 南條 輝志男 田嶼 尚子 門脇 孝 柏木 厚典 荒木 栄一 伊藤 千賀子 稲垣 暢也 岩本 安彦 春日 雅人 花房 俊昭 羽田 勝計 植木 浩二郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.485-504, 2012 (Released:2012-08-22)
参考文献数
59
被引用文献数
10 1

本稿は,2010年6月発表の「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」以降の我が国におけるHbA1c国際標準化の進捗を踏まえて,同報告のHbA1cの表記を改めるとともに国際標準化の経緯について解説を加えたものである. 要約 概念:糖尿病は,インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし,種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である.その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与する.代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすく,動脈硬化症をも促進する.代謝異常の程度によって,無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示す. 分類(Table 1,2,Fig. 1参照):糖代謝異常の分類は成因分類を主体とし,インスリン作用不足の程度に基づく病態(病期)を併記する.成因は,(I)1型,(II)2型,(III)その他の特定の機序,疾患によるもの,(IV)妊娠糖尿病,に分類する.1型は発症機構として膵β細胞破壊を特徴とする.2型は,インスリン分泌低下とインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)の両者が発症にかかわる.IIIは遺伝因子として遺伝子異常が同定されたものと,他の疾患や病態に伴うものとに大別する. 病態(病期)では,インスリン作用不足によって起こる高血糖の程度や病態に応じて,正常領域,境界領域,糖尿病領域に分ける.糖尿病領域は,インスリン不要,高血糖是正にインスリン必要,生存のためにインスリン必要,に区分する.前2者はインスリン非依存状態,後者はインスリン依存状態と呼ぶ.病態区分は,インスリン作用不足の進行や,治療による改善などで所属する領域が変化する. 診断(Table 3~7,Fig. 2参照): 糖代謝異常の判定区分: 糖尿病の診断には慢性高血糖の確認が不可欠である.糖代謝の判定区分は血糖値を用いた場合,糖尿病型((1)空腹時血糖値≧126 mg/dlまたは(2)75 g経口糖負荷試験(OGTT)2時間値≧200 mg/dl,あるいは(3)随時血糖値≧200 mg/dl),正常型(空腹時血糖値<110 mg/dl,かつOGTT2時間値<140 mg/dl),境界型(糖尿病型でも正常型でもないもの)に分ける.また,(4)HbA1c(NGSP)≧6.5 %(HbA1c(JDS)≧6.1 %)の場合も糖尿病型と判定する.なお,2012年4月1日以降は,特定健康診査・保健指導等を除く日常臨床及び著作物においてNational Glycohemoglobin Standardization Program(NGSP)値で表記されたHbA1c(NGSP)を用い,当面の間,日常臨床ではJDS値を併記する.2011年10月に確定した正式な換算式(NGSP値(%)=1.02×JDS値(%)+0.25 %)に基づくNGSP値は,我が国でこれまで用いられてきたJapan Diabetes Society(JDS)値で表記されたHbA1c(JDS)におよそ0.4 %を加えた値となり,特に臨床的に主要な領域であるJDS値5.0~9.9 %の間では,従来の国際標準値(=JDS値(%)+0.4 %)と完全に一致する. 境界型は米国糖尿病学会(ADA)やWHOのimpaired fasting glucose(IFG)とimpaired glucose tolerance(IGT)とを合わせたものに一致し,糖尿病型に移行する率が高い.境界型は糖尿病特有の合併症は少ないが,動脈硬化症のリスクは正常型よりも大きい.HbA1c(NGSP)が6.0~6.4 %(HbA1c(JDS)が5.6~6.0 %)の場合は,糖尿病の疑いが否定できず,また,HbA1c(NGSP)が5.6~5.9 %(HbA1c(JDS)が5.2~5.5 %)の場合も含めて,現在糖尿病でなくとも将来糖尿病の発症リスクが高いグループと考えられる. 臨床診断: 1.初回検査で,上記の(1)~(4)のいずれかを認めた場合は,「糖尿病型」と判定する.別の日に再検査を行い,再び「糖尿病型」が確認されれば糖尿病と診断する.但し,HbA1cのみの反復検査による診断は不可とする.また,血糖値とHbA1cが同一採血で糖尿病型を示すこと((1)~(3)のいずれかと(4))が確認されれば,初回検査だけでも糖尿病と診断する.HbA1cを利用する場合には,血糖値が糖尿病型を示すこと((1)~(3)のいずれか)が糖尿病の診断に必須である.糖尿病が疑われる場合には,血糖値による検査と同時にHbA1cを測定することを原則とする. 2.血糖値が糖尿病型((1)~(3)のいずれか)を示し,かつ次のいずれかの条件がみたされた場合は,初回検査だけでも糖尿病と診断できる. ・糖尿病の典型的症状(口渇,多飲,多尿,体重減少)の存在 ・確実な糖尿病網膜症の存在 3.過去において上記1.ないし2.の条件がみたされていたことが確認できる場合は,現在の検査結果にかかわらず,糖尿病と診断するか,糖尿病の疑いをもって対応する. 4.診断が確定しない場合には,患者を追跡し,時期をおいて再検査する. 5.糖尿病の臨床診断に際しては,糖尿病の有無のみならず,成因分類,代謝異常の程度,合併症などについても把握するよう努める. 疫学調査: 糖尿病の頻度推定を目的とする場合は,1回の検査だけによる「糖尿病型」の判定を「糖尿病」と読み替えてもよい.この場合,HbA1c(NGSP)≧6.5 %(HbA1c(JDS)≧6.1 %)であれば「糖尿病」として扱う. 検診: 糖尿病を見逃さないことが重要で,スクリーニングには血糖値をあらわす指標のみならず,家族歴,肥満などの臨床情報も参考にする. 妊娠糖尿病: 妊娠中に発見される糖代謝異常hyperglycemic disorders in pregnancyには,1)妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus(GDM),2)糖尿病の2つがあり,妊娠糖尿病は75 gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する. (1)空腹時血糖値 ≧92 mg/dl (2)1時間値 ≧180 mg/dl (3)2時間値 ≧153 mg/dl 但し,上記の「臨床診断」における糖尿病と診断されるものは妊娠糖尿病から除外する.
著者
葛谷 健 中川 昌一 佐藤 譲 金澤 康徳 岩本 安彦 小林 正 南條 輝志男 佐々木 陽 清野 裕 伊藤 千賀子 島 健二 野中 共平 門脇 孝
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.385-404, 1999-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
47
被引用文献数
86

糖尿病は, インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし, 種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である. その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与する. 代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすく, 動脈硬化症をも促進する. 代謝異常の程度によって, 無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示
著者
田坂 仁正 高山 真一郎 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1039-1043, 1998-11-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
7

正月前後の血糖コントロールと体重の変化を検討するために, 初診来院し糖尿病外来通院中の66名をat randomに選び, 10月より翌年の6月まで5月を除き毎月のHbA1cならびに体重の変動を2年間継続追求した. 対象は男性38名 (年齢56±2歳), 女性28名 (54±2歳) で治療はインスリン注射16名, 経口薬25名, 食事療法単独25名である. 次のような成績を得た.(1) 10月を起点としてすでに11月よりHbA1cは有意に上昇しこの上昇は半年にも及んだ. HbA1cは2月に平均0.35%増加した.(2) 体重は3月との比較でもなお0.6kgの高値を認めた. これらの傾向は2年目においてもほぼ同様であった.(3) 男女の比較では女性ではHbA1cが男性に比し早期に前値に復帰した.(4) 治療法による差はなかった. 以上の所見より血糖コントロールの長期にわたる厳格な正常化には正月前後の血糖値の正常化が極めて重要である.
著者
三浦 順之助 内潟 安子 岩本 安彦
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.E78-E84, 2011-03-31

1型糖尿病は、膵β細胞が破壊されることによりインスリンの絶対的欠乏が生じて発症する病型であるが、自己免疫機序が関与する1A型と、発症機序の明らかでない特発性の1B型に亜分類される。1A型糖尿病の診断には、Islet cell antigen (ICA)をはじめとして、インスリン自己抗体(insulin autoantibody : IAA)、抗Glutamic acid decarboxylase (GAD)抗体、および抗Insulinoma-associated antigen- 2 (IA-2)抗体が主要抗体として知られており、病型診断に利用されている。また、これらは発症以前からの予知因子としても重要である。,IAAはインスリンの投与を受けていない人の血中に存在する抗インスリン抗体である。1型糖尿病の発症5年以上前から血中に出現し、若いほど抗体価が高値になる傾向がある。GADは、γ- aminobutyric acid (GABA)を合成する酵素であるが、発症早期の1型糖尿病患者の血清中に、GADに対する抗体の存在が確認されたのは1990年であった。65kDaと67kDaのisoformがあり、現在国内では、リコンビナントGAD65を抗原として使用したコスミック社のキットを用いて測定されている。日本人1型糖尿病患者での発症早期の抗GAD抗体陽性率は、約70%である。IA-2は1994年ヒトインスリノーマの外科切除組織からcloning された、979個のアミノ酸、約106kDaの膜貫通型タンパクであり、protein tyrosine phosphatase (PTP)ファミリーに属している。抗IA-2抗体の陽性率は、海外で55〜75%、本邦では急性発症の早期では60%程度、5年以上経過した症例では40%程度との報告がある。最近、zinc transporter-8に対する新規自己抗体が発見された。白人1型糖尿病患者の60%程度に陽性であり、本抗体単独陽性患者は4%であった。他に抗VAMP-2 (Vesicle associated membrane protein -2)抗体、抗NPY (Neuropeptide-Y) 抗体があり、我々はそれぞれ21%、9%程度存在することを確認している。新規膵特異的自己抗体の検出は、1型糖尿病のサブタイプの診断に有用な情報となりうる。
著者
坊内 良太郎 馬場園 哲也 花井 豪 岩本 安彦 Ryotaro BOUCHI Tetsuya BABAZONO Ko HANAI Yasuhiko IWAMOTO
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.81, no.臨時増刊(岩本安彦教授退任記念特別), pp.E135-E140, 2011-03-31 (Released:2012-08-15)

(医学部内科学(第三)教室岩本安彦教授退任記念特別号)
著者
熊倉 忍 坂本 美一 岩本 安彦 松田 文子 葛谷 健
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.499-504, 1988-06-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

黒色表皮症を伴い家族性に高インスリン血症を認めたインスリン受容体異常症の1例を報告する. 症例は16歳女性. 主訴は腋窩部の色素沈着. 男性化徴候や多嚢胞性卵巣はない. 100g経ログルコース負荷試験 (OGTT) では耐糖能は正常だが高インスリン血症 (基礎値40μU/ml, 頂値746μU/ml) を呈した. インスリン抗体, インスリン受容体抗体はなく, インスリン拮抗ホルモンは正常であった. インスリン感受性試験で感受性の低下を認めた. 患者赤血球のインスリン結合能と親和性はほぼ正常であった. 患者血清のゲル濾過の結果高プロインスリン血症は否定された. 患者インスリンの生物活性をモルモット腎膜成分を用いるRadioreceptor assay (RRA) およびラット脂肪細胞を用いるグルコース酸化能にて検討したが正常であった. 以上より, このインスリン抵抗性は受容体結合以後の障害と考えられた. また, 母親, 兄弟に高インスリン血症を認め, 遺伝性疾患である可能性が高い.
著者
稲葉 利敬 六角 久美子 板橋 直樹 井手野 順一 長坂 昌一郎 本多 一文 岡田 耕治 横山 水映 石川 三衛 齊藤 寿一 内潟 安子 岩本 安彦 石橋 俊
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.787-790, 2003-10-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
12
被引用文献数
4

症例は69歳, 女性.1993年 (平成5年) 10月Graves病と診断されmethimazole (MMI) 投与を開始.1997年 (平成9年) 7月より夜間空腹感を自覚し, 低血糖症を指摘された.インスリン注射歴のないこと, 血中インスリンの異常高値, 高力価のインスリン抗体の存在からインスリン自己免疫症候群と診断.同年7月, 甲状腺機能低下を認めMMIは中止されたが, 低血糖症状が持続し2000年 (平成12年) 6月入院.75gOGTTは糖尿病型, 入院食摂取下の血糖日内変動では低血糖を認めず, 絶食試験で19時間後に低血糖を認めた.HLA-DRB1*0406を認めた.Scatchard解析の結果, 本症例のインスリン抗体はポリクローナルで, そのhigh-affinity siteのK1は2.35×108M-1, b1は1.32×10-8Mと計算された.本症例の血清は, 加えたヒトインスリンに対しての本症候群に特徴的とされる低親和性, 高結合能に比して高親和性でかつ低結合能を示した.本症候群では, 誘因となる薬物の開始後早期に発症し, 薬物中止後数カ月以内に低血糖発作が自然緩解する例が多いとされるが, 本例は, MMI開始4年後に診断され中止後も症状が持続する, 特異な臨床経過を示した症例であった.
著者
大谷 敏嘉 笠原 督 内潟 安子 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.865-871, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

50歳頃から急に重症低血糖を頻回に起こし始めた44年以上の罹病歴を有する小児期発症1型糖尿病の3症例を報告する.症例1は53歳の女性.1959年11月(6歳)発症.2002年3月(48歳)から意識消失を伴う低血糖が頻回に出現.症例2も53歳の女性.1962年12月(9歳)発症.2002年6月(48歳)から意識消失を伴う低血糖が頻回に出現.症例3は52歳の女性.1959年9月(4歳)発症.2005年12月(51歳)から意識消失を伴う低血糖が頻回に出現.全症例とも更年期から低血糖が重症化してきた.症例2では更年期に加え自律神経障害の関与が考えられた.小児期発症1型糖尿病女性患者では更年期を迎える50歳頃から急にそれまでとは異なる重症低血糖を頻回に起こすようになることがあるので,治療にはより細やかな対応が必要である.
著者
永尾 麻紀 佐中 眞由実 手納 信一 野村 馨 肥塚 直美 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 = Journal of the Japan Diabetes Society (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.275-278, 2006-04-30
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は26歳,女性.8歳発症の1型糖尿病患者で妊娠5週に当センターを紹介され初診.HbA<sub>1</sub>c 7.7%でありコントロールのため入院.糖尿病合併症は認められず,血糖コントロール改善したため退院.妊娠11週頃からHbA<sub>1</sub>c 5%台にもかかわらず,口渇,1日4~5<i>l</i>の多飲および多尿が出現.ADH-アルギニンバソプレシン(以下,AVP)0.15 pg/m<i>l</i>と低値であったため,尿崩症の合併が疑われ,妊娠15週に精査のため入院.DDAVP(デスモプレシン)10 &mu;gの試験的投与にて中枢性尿崩症と診断.DDAVP開始後,自覚症状は改善し尿量も約2<i>l</i>/日に減少した.妊娠38週2日,自然分娩にて3,440 gの女児を出産.児は新生児低血糖を認めたが,他の合併症は認めなかった.授乳終了後に行った頭部MRIでは,下垂体後葉のhigh intensity areaの消失が認められた.妊娠中に尿崩症を発症した1型糖尿病合併妊婦の稀有な症例を試験したので報告する.
著者
坊内 良太郎 手納 信一 塚原 佐知栄 田中 伸枝 菅野 宙子 石井 晶子 中神 朋子 川島 眞 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.27-33, 2006 (Released:2008-07-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

後天性反応性穿孔性皮膚症(acquired reactive perforating collagenosis; ARPC)は皮膚表皮への変性膠原線維の排出を特徴とし,糖尿病や慢性腎不全に合併する稀な皮膚疾患である.われわれは血液透析導入後の1型糖尿病に本症を合併し,厳格な血糖コントロールとアロプリノール投与が奏効した症例を経験した.症例は26歳,女性.1986年(9歳)に1型糖尿病を発症.2001年頃から背部と両下肢伸側に〓痒感の強い丘疹が多数出現し,ARPCと診断された.ステロイドおよび抗ヒスタミン薬による局所治療を4年間受けていたが難治性であった.2002年4月慢性腎不全のため血液透析を導入,2004年3月膵腎移植登録目的で入院した.1,800kcal,蛋白40gの食事療法および強化インスリン療法を行い,アロプリノール100mgを開始したところ,約2週間で〓痒感が軽減し,2カ月後には皮疹も減少した.ARPCの発症機序は十分に解明されておらず難治性であることが多いが,本症例では血糖の厳重な管理に加えアロプリノールが奏効したと考えられた.
著者
三浦 文子 吉野 正代 富岡 光枝 長谷川 美彩 田中 康富 嶺井 里美 尾形 真規子 佐藤 麻子 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.865-870, 2009-10-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
8

簡易血糖測定器は,糖尿病患者が自己管理に用いるだけでなく,臨床現場での迅速な血糖測定に活用されることも多い.安定性については今までにも報告されているが,近年,測定時間の短縮化,血液量の微量化などの改良がなされてきている.そこで,環境・検体要因が血糖測定の安定性に支障をきたすことがないか,5機種の簡易血糖測定器を用いて,高低3濃度の血糖値について検討を行った.5機種とも同時再現性と希釈直線性は良好であった.静脈血血漿と指尖血全血の相関は各機種とも良好であったが,測定環境,患者因子,共存物質の影響で測定原理の違いや機種により測定値にばらつきが認められた.特に,環境因子の影響は血糖濃度により差異が認められ,使用方法や測定環境と共に,血糖実測値の高低による各因子の影響を含め測定値の評価をする必要のあることが示された.
著者
内潟 安子 折笠 秀樹 坂巻 弘之 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.743-750, 1999-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
13
被引用文献数
10

糖尿病における糖尿病性合併症と医療費との関係を検討するために, 東京女子医科大学糖尿病センターにおいて治療を受けている糖尿病患者81例 (再来全患者総数の8%) の過去11ヵ月の1通院当たりの平均医療費を分析した.調査対象となった全患者1回通院当たりの医療費は4, 526±5, 669点 (平均±標準偏差) であった. 糖尿病性合併症の有無別では, 神経障害網膜症, 腎症および足病変のいずれについても合併症を有する群で費用が有意に高かった. 治療中断の医療費に対する影響を分析した結果, 治療中断のあった群では, 合併症発現の割合が高く, 医療費についても高い傾向が認められた. 今後, 糖尿病医療費に影響を与える要因の精査のために広範な前向きコホート研究が必要と考えられた.
著者
関 洋介 笠間 和典 中神 朋子 岩本 安彦 清水 英治 吉川 絵梨 中里 哲也 園田 和子 根岸 由香 梅澤 昭子 黒川 良望
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.282-287, 2011 (Released:2011-05-11)
参考文献数
18

症例は41歳,男性.体重132 kg, BMI 52.2 kg/m2. 2型糖尿病,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症,睡眠時無呼吸症候群を有し,肥満に対し数回の入院を含め18年にわたる内科的治療を行うも奏効しなかった.糖尿病細小血管症の進行,肥満随伴疾患の増悪を認めたため外科的治療目的で当院初診し,腹腔鏡下スリーブバイパス術を施行された.術後より経口血糖降下剤を中止したが,HbA1cは低下,5%台(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病53: 450, 2010))で経過.術後6ヶ月目に施行した75 g経口ブドウ糖負荷試験では正常型を示した.術前認められた尿蛋白は術後6ヶ月目以降陰性化し,術後1年目には単純網膜症のグレードが低下,肥満随伴疾患も改善,術後14ヶ月目の体重は63.5 kg, BMI 25.8 kg/m2である.内科治療抵抗性高度肥満2型糖尿病において外科治療による減量や代謝異常改善の短期的効果は極めて良好であった.今後,外科治療の長期的効果や安全性を注意深く観察する予定である.
著者
手納 信一 馬場園 哲也 勝盛 弘三 岩崎 直子 川島 員 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.387-391, 2000-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
25
被引用文献数
2

色素性痒疹は著しい瘋痒を伴う紅色丘疹が発作性に多発し, 後に粗大網目状の色素沈着を残す皮膚疾患である. その発症にケトーシスの関与も示唆され, 糖尿病領域でも注目されている. われわれは, 過去6年間に糖尿病に合併した色素性痒疹を3例経験したので, 文献的考察を含め報告する. 症例は20歳, 15歳および41歳の男性, いずれも糖尿病の発症時にケトーシスと癌痒を伴う紅色丘疹が出現し, インスリン治療開始後, 網状の色素沈着を残し軽快した. 糖尿病と色素痒疹の合併例の報告は本邦で11例と少なく, 偶然合併した可能性も否定できない. しかし, 両疾患においてHLAの交差が存在するので自己免疫機能が発症に関与している可能性も考えられる, 色素性痒疹の発症機序や, ケトーシスとの関連の解明のため, 今後さらなる症例の蓄積が必要である.
著者
奥平 真紀 内潟 安子 岡田 泰助 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.781-785, 2003-10-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
9
被引用文献数
6

2型糖尿病患者の合併症予後に検診と治療中断が及ぼす影響を検討した.対象は1998年11月から1999年1月までに東京女子医科大学糖尿病センターを初診した2型糖尿病患者133名である.検診で糖尿病を発見された『検診発見群』76名は『検診以外発見群』57名と比べ, 治療中断の頻度及び合併症重症度に差異はみられなかった.1年以上の治療中断歴をもつ『中断あり群』48名は『中断なし群』85名と比べ, 有意に合併症は重症化しており (p<0.0005), 更に中断年数が長くなるほど合併症は重症化していた (p<0.0001).一方, 検診を受けていても治療中断をすると, 合併症は重症化していた (p<0.01).糖尿病合併症の発症には検診で発見されたかどうかは関係がなく, 治療中断が大きな影響を与えていることが明らかになった