- 著者
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川島 宏文
中里 光弘
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.1, pp.1-8, 1993-01-25
- 被引用文献数
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本論文の目的はTTカットと命名される,新カットねじり水晶振動子を提案し,その周波数特性,周波数温度特性および電気的諸特性を明らかにすることにある.まず,解析手順として,本論文では運動方程式をエネルギー法を用いて導出する.次に,両端自由,両端固定あるいは,一端固定,他端自由の境界条件で運動方程式を解き,厚みz_0,幅x_0,長さy_0の関数として与えられる周波数方程式を導出する.更に,この式より,辺比Rzx=z_0/x_0に対する周波数定数(f・y_0)との関係ならびに,1次温度係数αがα=0となる辺比Rzxとカット角(φ,θ)との関係が理論的に導出される.そして,α=0となる辺比Rzxとカット角(φ,θ)は無数に存在することが示される.その中で特に量産性に優れるカット角φ=28°,θ=10°で2次温度係数が-1.16X10^<-8>/℃^2とその絶対値は屈曲水晶振動子の場合の約1/3倍とかなり小さい値が得られる.更に,この結果は実験値-1.32X10^<-8>/℃^2と比較され,両結果とも十分によく一致することが示される.最後に,音さ形状での等価直列抵抗R_1とQ値が調査され,その結果,周波数fはf=385〜444kHzで,R_1=2.2〜14.4kΩ,Q=276,000〜378,000とR_1の小さい,高いQ値を有する音さ型ねじり水晶振動子であることが示される.