著者
川崎 一泰
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.107-122, 2011 (Released:2022-07-15)
参考文献数
12

わが国の地域間の人口移動は,地域間所得格差の縮小に伴い収束に向かいつつある。こうした現象に対して,Barro and Sala-i-Martin(1992)をはじめとした実証研究がすすめられ,人口移動の収束が限界生産性の均等化によるものかが論点となっている。この論争の中で,持田(2004)では,人口などの生産要素の移動は,限界生産性に加え,財政余剰も影響を及ぼしていることを指摘している。本稿では,生産要素の流動化を通じた労働力及び資本の最適配分を推計し,近年の人口移動の収束が地域間格差縮小によるものか否かを判定するとともに,その際に財政を通じてなされた地域間再分配の影響を明らかにする。 実証分析を進めた結果,わが国の人口移動の収束は,地域間所得格差の縮小によるものではなく,限界生産性の地域間格差を相殺するように財政余剰の格差が生じているためであることが明らかになった。財政を通じた再分配は,地域間所得格差を縮小することはできたが,生産性の差を縮小することはできなかった。つまり本稿は,財政の再分配には所得格差を縮小する代わりに,地域の自立的発展を阻害する側面があることを明らかにした。
著者
川崎 一泰
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.236-253, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
14

本研究では,地方再生の1つの手段として期待されるコンパクト・シティを財政的な側面からその効率性を評価し,地域の経済活動指標と合わせて検討することで,効率的都市像の検討を行った。本論文では,概念的な議論の多いコンパクト・シティのコンパクト性を統計的に捉える指標を探り,小地域データを使った実証分析及びシミュレーション分析を試みた。 分析の結果,自治体の社会経済環境に応じて異なるが,平均的に人口集中地区(DID)人口密度が5150人/km2程度の規模で,行政コストが最小になることがわかった。また,この規模では地域の経済活動は高まらず,コンパクト・シティが機能を連携・分担する都市圏を形成することが求められることを示唆する結果も得られた。