著者
川崎 晋 齋藤 美枝 持田 麻里 等々力 節子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.259-263, 2018-05-15 (Released:2018-05-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

牛挽肉および肝臓中でのC. jejuniのγ線照射による殺菌効果について検討を行い,殺菌に必要とされる線量応答を取得した.その際,望ましいγ線照射形態について検討するため,冷蔵·冷凍および含気·脱気包装条件下での殺菌効果を比較した.牛肝臓中でのγ線照射による殺菌には,従来の報告で示された牛挽肉殺菌試験結果よりやや高めの線量が必要で,冷蔵条件の場合のD10値は,含気条件で0.26kGy,脱気条件で0.33kGyであった.この現象は冷凍条件下ではより顕著に観察され,凍結条件下でのD10値は0.58kGyと,先の牛挽肉研究例と比較して高い線量照射を必要とした.さらに牛肝臓を脱気包装した場合では,さらなる殺菌効果の低下が観察され,D10値は0.69kGyとなり含気条件下よりさらに高い線量照射を必要とした.放射線照射時は食品自身の劣化防止のため低温かつ酸素濃度を低下させた環境が望まれるが,牛肝臓中での殺菌を行う場合,上記条件下での照射は品質評価と共に慎重に検討すべきである.
著者
細谷 幸恵 川崎 晋 前田 憲成 稲津 康弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.376-383, 2020-10-15 (Released:2020-11-02)
参考文献数
21

味噌に混入させた大腸菌O157の消長を明らかにするために,市販味噌24検体を対象に複数の保存試験区(5,10,20,30 °C)における大腸菌O157生菌数の変動を寒天平板法およびMPN法により観察した.全保存試験区において,味噌混入下の大腸菌O157は増殖することなく段階的に死滅し,その死滅速度と味噌原料(米,麦,大豆)に関連は見られなかった.一方,味噌検体の水分活性値が大腸菌O157の死滅速度に影響を与える可能性を示した.本結果により,大腸菌O157が意図せず味噌に混入した場合であっても,常温での流通,保存の期間に死滅することから,そのリスクは実質的に無視しうるものであると推察された.