著者
水野 義隆 西村 園子 椛島 真一郎 鍋田 優 早川 文代 稲津 康弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00052, (Released:2023-09-19)

カット野菜の製造工程では喫食サイズにカットした野菜を次亜塩素酸ナトリウム水により殺菌することが多く,それが野菜の食味変化や褐変などの原因となることもある.一方,カット野菜の殺菌にはオゾン水も利用できる.本研究は,原体野菜のカットの際にスライサーに界面活性剤を含むオゾン水をかけ流す製造方法(以下,新製法)と,水を流しながら同様にカットし,その後,次亜塩素酸ナトリウム水溶液による浸漬処理を行う製造方法(以下,通常製法)の野菜の殺菌および品質に与える影響を比較した.菌数評価では,カットキャベツ,カットレタスおよびカット大根において,新製法区の一般細菌数および大腸菌群数は通常製法区と統計的に有意な差はみられなかった.成分分析では,カットキャベツおよびカット大根において,通常製法区のアスコルビン酸含有量が新製法区に比べ有意に低下していた.外観評価では,カットキャベツおよびカット大根において,通常製法区は変色しボリュームダウンしていたのに対して,新製法区では変色せずにボリューム感があった.官能評価では,カットキャベツにおいては通常製法区は甘味が弱くなり,カット大根においては通常製法区はシャキシャキ感と甘味が弱くなり,薬品臭,苦味および水っぽさが強くなったのに対して,新製法区では水洗いに近い食味であった.以上の結果より,新製法は通常製法と同等の菌数を示し,野菜本来の食味・外観を劣化させにくいことが判明した.さらに新製法は通常製法と比較すると浸漬処理工程を省略できることから,製造時間の短縮や使用水量の低減につながる技術として利用できるものと考えられる.
著者
細谷 幸恵 川崎 晋 前田 憲成 稲津 康弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.376-383, 2020-10-15 (Released:2020-11-02)
参考文献数
21

味噌に混入させた大腸菌O157の消長を明らかにするために,市販味噌24検体を対象に複数の保存試験区(5,10,20,30 °C)における大腸菌O157生菌数の変動を寒天平板法およびMPN法により観察した.全保存試験区において,味噌混入下の大腸菌O157は増殖することなく段階的に死滅し,その死滅速度と味噌原料(米,麦,大豆)に関連は見られなかった.一方,味噌検体の水分活性値が大腸菌O157の死滅速度に影響を与える可能性を示した.本結果により,大腸菌O157が意図せず味噌に混入した場合であっても,常温での流通,保存の期間に死滅することから,そのリスクは実質的に無視しうるものであると推察された.