著者
久米 民和 等々力 節子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.469-478, 2019-07-15 (Released:2019-07-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1

食品照射の海外動向について,2017年の実施状況をまとめた。総処理量は中国の550,000トンが最も多く,次いでベトナムの110,000トンであり,世界の食品照射は急速に拡大している。検疫を目的とした新鮮果実・野菜の照射処理では,米国がメキシコなどから31,000トン輸入している。アジア・オセアニア諸国では米国への輸出だけでなく,オーストラリアやベトナムなど地域内での照射農産物の相互の輸出入を展開している。
著者
等々力 節子 亀谷 宏美 内藤 成弘 木村 啓太郎 根井 大介 萩原 昌司 柿原 芳輝 美濃部 彩子 篠田 有希 水野 亮子 松倉 潮 川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-29, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

食品中放射性セシウムの一般食品の新基準値である100Bq/kg程度の大麦玄麦を焙煎し,標準的な方法で調製した麦茶について放射性セシウムの浸出割合を検討した.焙煎麦から浸出液への放射性セシウムの移行は,浸出時間120分で38 %程度であった.浸出液は焙煎麦に対し約30倍量の水で希釈され,さらに移行率も50%を超えないため,麦茶の放射性セシウム濃度は,1.83Bq/kg程度であり,100Bq/kg程度(138Bq/kg)の玄麦を原料として使っても,飲料の基準の10Bq/kgを大きく下回ることが予想される.
著者
川崎 晋 齋藤 美枝 持田 麻里 等々力 節子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.259-263, 2018-05-15 (Released:2018-05-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

牛挽肉および肝臓中でのC. jejuniのγ線照射による殺菌効果について検討を行い,殺菌に必要とされる線量応答を取得した.その際,望ましいγ線照射形態について検討するため,冷蔵·冷凍および含気·脱気包装条件下での殺菌効果を比較した.牛肝臓中でのγ線照射による殺菌には,従来の報告で示された牛挽肉殺菌試験結果よりやや高めの線量が必要で,冷蔵条件の場合のD10値は,含気条件で0.26kGy,脱気条件で0.33kGyであった.この現象は冷凍条件下ではより顕著に観察され,凍結条件下でのD10値は0.58kGyと,先の牛挽肉研究例と比較して高い線量照射を必要とした.さらに牛肝臓を脱気包装した場合では,さらなる殺菌効果の低下が観察され,D10値は0.69kGyとなり含気条件下よりさらに高い線量照射を必要とした.放射線照射時は食品自身の劣化防止のため低温かつ酸素濃度を低下させた環境が望まれるが,牛肝臓中での殺菌を行う場合,上記条件下での照射は品質評価と共に慎重に検討すべきである.
著者
八戸 真弓 内藤 成弘 明石 肇 等々力 節子 松倉 潮 川本 伸一 濱松 潮香
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.34-38, 2014-01-15 (Released:2014-01-31)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

太さの異なる2種類のうどん生麺,太麺(2.5 mm × 3 mm)と細麺(1.5 mm × 1.5 mm)を作成し,それぞれにおいて茹で時間を変えて調理し,麺の太さと茹で時間が放射性セシウムの動態に及ぼす影響を評価した.太麺,細麺ともに茹で調理により,放射性セシウムが有意に低減されることが分かった.しかし,茹で時間の延長による加工係数の変化は,太麺で20分間まで,細麺で4.5分間までは有意に低下したが,それ以降は茹で時間の延長による有意な低下は認められなかった.残存割合は太麺では10分間で,細麺では3分間までは有意な低下が認められたが,それ以降は有意な低下は認められなかった.これらのことから,喫食に適する茹で時間(太麺では20分間,細麺では3-4.5分間)の調理において,茹で麺と茹で湯間の放射性セシウムの濃度勾配が小さくなり,それ以上の茹で時間の延長では,茹で麺の放射性セシウム濃度の有意な低下は起こらないことが明らかとなった.また,細麺のほうが太麺よりもより短い茹で時間で放射性セシウムの低減効果が得られるが,両茹で麺とも茹で調理により80 %以上の放射性セシウムが除去された.
著者
等々力 節子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.55-62, 2022-03-15 (Released:2022-03-16)
参考文献数
15

食品の放射線照射は,科学的根拠により設定された国際基準や規範に沿って実施され,照射食品は実用レベルで市場流通している。本稿では,技術の応用範囲,照射食品の国際的評価と国際基準について概説する。同時に,日本の研究開発の歴史や関係機関でなされた議論の内容を説明し,現在の国内状況の理解に役立てる。最後に,食品照射に関する国際的な協調研究の動向を示し,今後の技術開発の方向性を展望する。
著者
関口 正之 山崎 正夫 後藤 典子 等々力 節子 萩原 昌司
出版者
日本食品照射研究協議会
雑誌
食品照射 = Food irradiation, Japan (ISSN:03871975)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.14-23, 2007-09-30
被引用文献数
3 1

熱ルミネッセンス(TL)法による照射食品の検知は、欧州でハーブやスパイス、バレイショなどを対象に試験室間共同試験が実施され、分析法としての妥当性が確認されている。TL法は1996年に欧州規格EN1788となり、2001年に改訂され現在に至っている。本研究では、海外旅行者がトルコの空港で購入したスパイス(12種類)を試料として、TL測定を行った。TL比の算出にあたっては、当所で使用している70〜400℃の積算温度範囲の他に、EN1788が推奨するTLD-100素子で設定した積算温度範囲、およびDolomiteから試作した素子で設定した積算温度範囲も採用した。それぞれの積算温度範囲から算出した積算発光量のTL比に与える影響を調べた。TLD-100とSaffronについては、2つの研究機関で発光ピーク温度やTL比を測定し比較した。