著者
玉田 亨 岡下 慎太郎 橋本 和哉 荒川 博之 本田 領 神原 敏之 川本 達雄
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.274-278, 2004-12-25
被引用文献数
2

我々は顎変形症患者の性別による性格傾向を調査するため,本研究を行った.資料として1999〜2002年に本学附属病院矯正歯科を受診した(1)男性の顎変形症患者19名(平均年齢22.17歳,18〜27歳)(2)女性の顎変形症患者27名(平均年齢23.72歳,18〜39歳)を用いた.方法として,MINI自動心理診断システムver6.0(学芸図書出版)を用い,臨床尺度について比較検討を行った.男性の顎変形症患者群において有意水準p<0.05でHy(ヒステリー),Pd(精神病質的逸脱),Pa(妄想症)の尺度で有意に高得点を示した.女性の顎変形症患者群において有意な高得点を示す尺度はなかった.以上の結果,顎変形症患者の男性群は女性群と比較して,身体表現性障害や精神的障害の可能性が多いことが示唆された.
著者
布川 隆三 川本 達雄
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.325-338, 1990
被引用文献数
9

矯正歯科臨床分野において, 成長発育期の患者に対して, より効果的な顎の垂直的な成長コントロールを行うのに, ヘッドギアーと併用して嚥下時舌圧を利用したパラタルバーが使用されている. そのパラタルバーが上顎骨に及ぼす作用を調べるために, 成人および小児乾燥頭蓋骨各1体を試料とし, ストレインゲージ法を用いて力学的実験を行った. その結果, ストレートとカーブの2つのタイプのパラタルバーに荷重を加えた場合, 以下に示すような結論を得た.<br> 1) 上顎骨の歯槽骨頬側板における歪分布は, パラタルバーのタイプによって異なるが, 成人および小児頭蓋を問わず, ストレートタイプでは上顎第一大臼歯を中心とする側方歯の歯槽骨頬側板において, 咬合平面に対して垂直方向の圧縮歪が認められた. それに対して, カーブタイプでは同部位における圧縮歪は前者よりも小さい値を示した.<br> 2) 歯槽骨舌側板での歪分布は, 成人および小児頭蓋において, ストレートタイプでは上顎第一大臼歯を中心とする側方歯の歯槽骨舌側板で, 咬合平面に対して垂直方向の圧縮歪が認められた. それに対して, カーブタイプでは同部位における圧縮歪は前者よりも大きい値を示した.<br> 3) 小児頭蓋ではパラタルバーのタイプを問わず, ヘッドギアーの後上方牽引時のような反時計まわりの回転に近い上顎骨の変形が認められた.<br> 4) 成人および小児頭蓋ではパラタルバーのタイプを問わず, 上顎骨に隣接する周囲骨にも歪が及んでいた.<br> 以上の結果から, パラタルバーは成長発育期のII級I類不正咬合および下顎下縁平面角の大きい不正咬合の患者に対してヘッドギアーと併用することによって, 上顎第一大臼歯を中心とする側方歯群の歯槽骨の垂直的な成長コントロールが行える. また, 成人に使用した場合も, 顎間ゴムなどの矯正力による上顎第一大臼歯の提出および近心移動などに抵抗する固定源の加強として役立つことが示唆された.
著者
山脇 裕 川本 達雄
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.53-63, 1996-03-25
被引用文献数
7

矯正歯科臨床においてパラクルバーは舌の機能力を上顎大臼歯に伝達し, 上顎大臼歯の垂直的な矯正力に対するコントロールを行うことを目的として用いられる場合がある. 嚥下時に舌によりパラクルバーを介して上顎第一大臼歯に伝達される垂直力の大きさ, および特性を明確にすることを目的として本研究を行った. 被験者は正常咬合を有する22名で, 平均年齢は22.3歳であった. 測定装置はカンチレバー式ストレインゲージトランスデューサーを用いた口腔内センサー, ひずみ測定用直流増幅器およびオシログラフよりなる. 口腔内センサーは左側第一大臼歯の矯正バンドに設置した. パラクルバーはゴシュガリアンクイプとした. パラクルバーの右側脚部は大臼歯バンドに固定し, 左側脚部は遊離端として口腔内センサーに連結した. 測定条件は37で, 5mlの水の嚥下時, 意識下での唾液の嚥下時および180mlの水の嚥下時とした. 測定は波形, 力の大きさ, 持続時間および力の時間積分について行った. 測定の結果, 波形は二相性を示した. 5mlの水の嚥下時の垂直力の平均値は743.3g, 持続時間の平均値は1.30sec, 時間積分の平均値は396.2g・secであった. 唾液嚥下時の垂直力の平均値は816.0g, 持続時間の平均値は1.63sec, 時間積分の平均値は628.2g・secであった. 180mlの水の嚥下時の垂直力の平均値は925.2g, 持続時間の平均値は10.37sec, 時間積分の平均値は2,792.4g・secであった. 嚥下頻度に関する研究の結果より, パラクルバーに嚥下時に力が付加される頻度は非常に高いことが推測される. また, 本研究において得られた付加される垂直力の大きさおよび持続時間より考えパラクルバーは矯正歯科臨床において上顎大臼歯の垂直的コントロールに効果があることが示唆された.