著者
佐々木 花恵 小渡 亮介 大徳 和之 川村 知紀 山﨑 志穂 皆川 正仁
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.245-248, 2022-07-15 (Released:2022-07-30)
参考文献数
11

症例は13歳男性で先天性水頭症症例である.自宅にて呼吸停止状態で発見され,当院救急搬送後に蘇生したが,重度の脳障害を負った.搬送1カ月後に当院で気管切開術が施行された.気管切開後2カ月で気管腕頭動脈瘻を院内発症し,腕頭動脈離断術と直接縫合閉鎖による気管瘻孔修復術が行われた.術後2週間目に気管修復部破綻をきたし,体外式膜型人工肺(VA-ECMO)下での気管形成術を行った.VA-ECMO確立後,気管切開カニューレを抜去した.気管損傷部を紡錘形になるようにトリミングし,マットレス縫合をかけて気管形成を行った.その後,経口で気管挿管チューブを気管分岐部直上に留置し,気管形成部の安静をはかった.術後15日目に気管切開へのチューブ交換が行われた.術後3カ月現在,気管形成部破綻や再出血はない.気管瘻孔部への補てん物の縫着が困難な気管修復部破綻症例に対して,VA-ECMO補助下での気管形成は有用な治療選択肢であると考えられた.
著者
小笠原 尚志 大徳 和之 野村 亜南 川村 知紀 谷口 哲 福田 幾夫
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.345-350, 2019-09-15 (Released:2019-10-02)
参考文献数
6

大動脈食道瘻は手術死亡率が高く,予後不良な疾患である.症例は胸部下行大動脈嚢状動脈瘤による嚥下困難を認めた72歳男性.胸部ステントグラフト内挿術施行4カ月後にendoleakによる大動脈瘤の拡大をきたし,食道内視鏡検査で中部食道に突出する壁欠損を伴う腫瘤を認めた.腫瘤内部は血栓で充満していた.大動脈造影ではステントグラフトの小彎側からI型のendoleakを認め,腫瘤内への血流を認めたため大動脈食道瘻と診断した.発熱はなく,血液検査ではCRPの上昇を認めたが,白血球数は正常であった.人工血管に感染が及ぶことが必至と思われたため,開胸人工血管置換術および健常大動脈壁による瘻孔閉鎖を行った.人工血管は大網で被覆し,瘻孔部と隔離した.術後経過は順調で,術後4年のCT検査では食道穿孔部の治癒を確認,9年後の現在健在である.