- 著者
-
川田 知子
- 出版者
- 法学新報編集委員会
- 雑誌
- 法学新報 (ISSN:00096296)
- 巻号頁・発行日
- vol.122, no.1・2, pp.187-214, 2015-08-03
本稿は、労働契約法一八条「無期転換ルール」の特例を定める法改正及び法整備を批判的に検討するものである。 一つは、二〇一三(平成二五)年一二月五日に成立した「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」である。これによって、一定の研究者や技術者等については、労働契約法一八条に基づく無期労働契約への転換要件となる五年の通算期間が一〇年に延長されることとなった。もう一つは、二〇一四(平成二六)年一一月二一日に成立した「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」である。同法は、高度な専門的知識などを持つ有期雇用労働者および定年後引き続き雇用される有期雇用労働者が、その能力を有効に発揮できるよう、事業主が雇用管理に関する特別の措置を行う場合に、労働契約法一八条の無期転換ルールに特例を設けたものである。 これらの法律は、無期転換ルールの特例の対象を拡大し、同ルールの空洞化をもたらすおそれがある。そのため、本稿は、これらの法律について、立法の背景及び経緯を踏まえて批判的に検討するものである。