著者
貴船 育英 岩谷 美江 川田 邦明
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.633-637, 1979-11-05 (Released:2010-01-18)
参考文献数
8

環境大気中に存在する数ppb程度のアンモニアの簡易定量法を検討した.採気方法は,ガス捕集面積17.3cm2を有するガラス繊維ろ紙に 3% ホウ酸-20%グリセリンの混合溶液を塗布したもの,又は8.6%シュウ酸-50%グリセリン混合溶液を塗布したものをろ紙ホルダーに装着し,吸引ポンプに直結し,20l/minの流量で吸引して,大気中の微量アンモニアを捕集する.採気の終わった捕集ろ紙は,イオン交換精製水20mlでろ紙よりアンモニアを抽出し,その一定量を分取して,フェノール-次亜塩素酸ナトリウムによって生成する青色のインドフェノールを直接640nmで吸光度を測定し定量する.ホウ酸及びシュウ酸ろ紙ともアンモニアの捕集率は,毎分20 lの通気流量でほぼ 100% の効率を示し,水による捕集ろ紙からのアンモニア抽出も100%の効率で抽出回収された.環境大気中測定可能なアンモニアガスの最小濃度は,インドフェノール法によるアンモニアの検出限界が0.38μg NH3/10mlであることから,ガス捕集面積17.3cm2を有するろ紙を用いた場合,大気を20 l/min,1時間採気で0.84ppbまでの大気中アンモニアの測定が可能である.これは,従来よりのインピンジャー法による1時間の大気の採気では16.7ppbが定量限界であることから,インピンジャー法に比し,ろ紙法では約20倍定量限界値が低くなり,ろ紙面積を更に大きくすればより微量の大気中アンモニアの定量が可能となる.本法では,捕集効率が優れ,捕集及び分析操作が簡便,迅速であり,しかも高感度で,その変動率も5.3%の分析精度であった.又,試料の運搬を容易とし,かつ長期間保存しても,試料の損失は認められなかった.
著者
川田 邦明 横山 ひろみ 尾崎 邦雄
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水質汚濁研究 (ISSN:03872025)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.306-312,295, 1989-05-10 (Released:2009-09-10)
参考文献数
34

新潟平野中央部の金属製品工場が多数立地する地域でトリクロロエチレン, テトラクロロエチレン, 1, 1, 1-トリクロロエタン, cis-1, 2-ジクロロエチレンおよび1, 1-ジクロロエタンによる地下水汚染を確認した。cis-1, 2-ジクロロエチレンと1, 1-ジクロロエタンは, 各々, トリクロロエチレンと1, 1, 1-トリクロロエタンの分解生成物と考えられた。また, この地域の地下水の水質は, 沖積層では大部分がアルカリ土類炭酸塩型であり, 洪積層では地域により異なっていた。そして, 低沸点有機塩素化合物による汚染は沖積層のうち最も浅い層を中心に進行したが, 洪積層には達していないと考えられた。さらに, 金属製品工場にある深さ10mの井戸における地下水の通年調査から, 低沸点有機塩素化合物の濃度は地下水位や, 調査井戸またはその周辺にある井戸の使用状況の変化による影響を受けると考えられた。