- 著者
-
関根 義彦
川股 信一
佐藤 裕一
- 出版者
- 日本海洋学会
- 雑誌
- 沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.2, pp.190-196, 1992-02-29
伊勢湾の沿岸フロントについて1989年12月および1990年11-12月にCTDによる断面観測を行った.1989年12月の観測は海底までの混合層が形成された後に行われ,知多半島の南と神島東の2つの場所に水温・塩分フロントが観測された.神島東のフロントでは密度の極大が認められた.1990年11-12月の観測は台風28号の到来前後に行われ,わずか3日の間に海況の大きな変化が認められた.特に台風に伴う河川水の流出で湾奥部の低塩分化が著しく,低塩分水が幾つかの塩分躍層を形成しながら沖側に拡散していく過程が観測された.神島東は1989年12月と同様に水温・塩分フロントが認められ,台風の影響が小さい前半の観測では密度の極大域が確認された.また,観測中木屑が20-40m程度の間隔で列をなして海面に浮いている様子がこのフロント域で目視されており,密度の極大域の形成と考え合わせて,このフロントは熱塩フロント的性格が強いことが示唆された.