著者
日比谷 紀之
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.177-190, 1988-02-29
著者
森 政次 野田頭 照美 新井 洋一
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.37-50, 1991-08-31

関西国際空港は大阪湾泉州沖5km,平均水深18mの海上において1987年に大規模な埋立による建設工事に着手した.護岸概成後の翌年12月から,護岸全周において藻類及び魚介類の分布調査を,護岸5ヶ所の調査点で付着生物の調査を行い,護岸構造と生物相との関係を調べた.護岸延長11.2kmの約80%を占める緩傾斜護岸は多種類の藻類の生育に適しており,水深1〜5m付近ではガラモ場が形成され,時間の経過とともにその分布範囲は拡がっていた.一方,垂直護岸は藻類の生育に適さないもののムラサキイガイなどの軟体動物にとっては有利な生息環境となっていた.今回の調査で,植物69種,動物271種,魚介類59種が観察された.これまでこの海域に見られなかった魚介類も出現しており,空港島が新たな生物空間を構築していることが明らかになった.また,埋立てによって失われた生物の現存量(15トン)を上回る生物の現存量(約300トン)が空港護岸で確認された.
著者
岩田 治郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.47-55, 1981-08-18

近年,河口域や沿岸域で農薬によると思われる魚介類の斃死事故が多発し,現在最も多く使用されている有機リン系,カーバメート系農薬の水生生物に及ぼす影響が,従来の淡水魚だけでなく沿岸域に生息する海水生物との係りの中で改めて注目されるようになった.本論では,有機リン系,カーバメート系農薬の海水生物に対する毒性に関する種々の報告から,それら農薬の沿岸生態系への影響を推察してみる.
著者
宇多 高明
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.159-168, 1992-02-29

モルディブのサンゴ礁上の砂浜におけるウォーターフロント利用を紹介し,熱帯リゾートとして良好に利用されている海浜も時として高波災害を受けることがあり,利用と保全の両立がかなり難しいことを示す.次に,我が国における海岸の現状について述べ,その中で我が国の海岸では種々の開発に伴って海岸侵食が著しく進み,砂浜が消失しつつある状況を明らかにする.そして我が国の海岸状況は,砂浜におけるウォーターフロント利用を盛んにする方向の議論と正反対の方向へと推移しつつあることを明らかにする.また,それらの真なる解決には,単に技術的な問題の解決のみではなく,海岸の管理体系自体の改革が必要であることを示す.
著者
磯田 豊 村山 達朗
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.85-95, 1990-08-31

対馬暖流の分枝流の一つは南西日本海の日本沿岸に沿って存在し,地形性β効果によって海底斜面に制御された定常流である。我々は浜田沖の大陸棚を対象海域とし,成層期である1988年8月5日・10月31日,非成層期である1989年1月30日・3月27日の計年四回のSTD及びADCP観測を行った。浜田沖の底部冷水の存在は一年中認められ,成層期にその低温化の傾向は強くなることがわかった。日本沿岸に沿った対馬暖流はこの底部冷水の存在領域によく対応し,二分枝化の傾向を示している。すなわち,第一分枝流は底部冷水の南限から沿岸域にかけて存在するほぼ順圧的な流動構造を持っている。一方,第二分枝流は陸棚縁上に位置し,傾圧的な流動構造を持っている。特に注目すべき流動構造の特徴は,これら両分枝流の間に下層の底部冷水に近づくほど顕著な反流域が存在している点である。
著者
松山 優治 当麻 一良 大脇 厚
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.63-74, 1990-08-31

東京湾の青潮の発生と伝播に関する数値実験を行った.観測に依れば,青潮は成層期に下層の貧酸素水が表面近くまで上昇することにより起こり,下層水の湧昇には北よりの風が寄与しているとされている.実験では湾奥から湾口に向かう風(北東風)を与えた時,千葉県側の湾東部と湾奥部に湧昇が現れ,風が止むと湧昇域は沿岸に沿って反時計周りに移動することが示された.また移動速度は内部ケルビン波の位相速度と一致していた.風の連吹時間を長くすると,湧昇は強くなるが,風の止んだ後の湧昇の移動速度は変わらない.また,夏季に比べて初秋は北よりの風の頻度が増えること,さらに成層が弱くなることから,湧昇が起こり易く,移動速度も遅いことから青潮に長時間さらされる湾奥の千葉や船橋では被害は大きくなることが解った.
著者
藤原 建紀 高杉 由夫 肥後 竹彦
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.38-46, 1989-08-31
被引用文献数
1

成層状態の内湾に風が吹くと躍層の深化・成層の崩壊・風が止んだ後の再成層化などの現象が起きる.水温・塩分・溶存酸素の自動観測装置を瀬戸内海の周防灘・播磨灘・大阪湾・江田島湾に長期間設置し,これらの現象を観測した.湾の長さが約60kmであり,上層と下層の密度差が5kg/m^3であった周防灘では,8〜12m/sの風によって,1日のうちに完全に成層が崩壊した.また風が止んだ後は,水平的な密度勾配による密度流が起き,約1日で再び成層状態にもどった.底層に及ぶ上下混合が強風によって起こされる頻度は,周防灘・播磨灘・大阪湾・江田島湾において,それぞれ4回/2月,3回/1月,0回/1月,0回/2.2月であった.
著者
関根 義彦 川股 信一 佐藤 裕一
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.190-196, 1992-02-29

伊勢湾の沿岸フロントについて1989年12月および1990年11-12月にCTDによる断面観測を行った.1989年12月の観測は海底までの混合層が形成された後に行われ,知多半島の南と神島東の2つの場所に水温・塩分フロントが観測された.神島東のフロントでは密度の極大が認められた.1990年11-12月の観測は台風28号の到来前後に行われ,わずか3日の間に海況の大きな変化が認められた.特に台風に伴う河川水の流出で湾奥部の低塩分化が著しく,低塩分水が幾つかの塩分躍層を形成しながら沖側に拡散していく過程が観測された.神島東は1989年12月と同様に水温・塩分フロントが認められ,台風の影響が小さい前半の観測では密度の極大域が確認された.また,観測中木屑が20-40m程度の間隔で列をなして海面に浮いている様子がこのフロント域で目視されており,密度の極大域の形成と考え合わせて,このフロントは熱塩フロント的性格が強いことが示唆された.
著者
磯田 豊 村山 達朗 玉井 孝昭
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.197-205, 1992-02-29

1989年7月28日から8月9日の13日間,山陰沖大陸棚上で流速計の係留観測とCTD及びADCPを用いた観測を行った.流速計は陸棚上の沿岸側と沖合い側,約45km離れた二ヵ所に設置された.この流速観則期間中,山陰沖海域一帯には台風接近に伴ってほぼ定常な北東風が連吹していたにもかかわらず,観測された流速や水温記録には5〜6日周期と2〜3日周期の二つの周期帯の変動が現れた.5〜6日周期の流速楕円は岸沖方向に設置された両観測点で逆位相・逆回転の変動,2〜3日周期の流速楕円は岸沖方向でほぼ同様な変動を示した.このような各周期変動の岸沖構造の違いは,第1モード(2〜3日周期)及び第2モード(5〜6日周期)の陸棚波が一様な風の強制によって同時に励起された可能性を示唆している.
著者
松山 優治 岩田 静夫 前田 明夫 鈴木 亨
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.4-15, 1992-08-29
被引用文献数
3

相模湾では時々,急潮が発生し,沿岸に設置された定置網に破損・流失という甚大な被害を与える.本研究では急潮を三例紹介し,その特徴について報告する.二例は沿岸域で急激な水温上昇と水位上昇を伴い,岸を右に見ながら湾を反時計回りに移動することが示された.観測点間の上昇の時間的なズレから,水温変化の移動速度は0.6〜1.0m/sで,水位変化の移動速度は2.0〜3.0m/sと推算された.二例のうち一例(1975年4月23日の急潮)は,黒潮の相模湾への接近が原因と考えられた.他の一例(1988年9月18日の急潮)は台風通過に伴うエクマン輸送で沖合水が沿岸に蓄えられ,それが移動したと推論された.発生原因は異なるが伝播特性は非常によく似ており,水温変化は非線形の内部ケルビン波あるいは回転系での沿岸密度流として,また水位変化は陸棚波の移動として考えると説明ができる.もう一例は反時計回りの循環流に半日周期の内部潮汐が重なって強い流れとなって,網の流失を引き起こした.最大流速は0.8m/sを越え,60m深での水温変化の全振幅は8℃にも達した.
著者
寺田 一彦
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, 1964-06-25