- 著者
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川辺 孝幸
- 出版者
- 地学団体研究会
- 雑誌
- 地球科学 (ISSN:03666611)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.5, pp.379-387, 2007-09-25 (Released:2017-05-16)
- 被引用文献数
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地震動によって被害を被った墓石の,墓地ごとの倒壊率や被害率は,地震動の大きさを反映していると考えられており,異常振動帯の認定や,倒壊率と地質との関係などが論じられている.ただ,墓石の場合,墓石の構造によって,被害の現れ方が異なり,個々の墓石からの力学的な復元は困難である.2007年能登半島地震において,破損した石造鳥居の状態を目にして,破損状態から鳥居の破損をもたらした力学的復元が可能ではないかと気がついた.そこで,能登半島内の20km×50kmの範囲の中で,240基の石造鳥居を観察した.その結果,149基について被害を確認した.被害は,岩石は硬くて脆いので,外力に対して敏感に反応して応力に対応した破壊がおこる.その結果,破損の部位の観察から,破壊をもたらした鳥居の変形の力学と,鳥居に働いた外力を推定できる.また,被害の程度を各部位の破損の状態を点数化して集計して評価した.外力の方向と破損の評価値をもとに地形図上にプロットして示した.鳥居の破損状況の調査からは,個々の地点の振動特性の具体的データとして利用できる可能性が明らかになった.筆者は,鳥居の破壊の調査をおこなうための記載シートを提示した.データの蓄積が進むことで,地震地質学的に貢献できるであろう.