著者
川頭 洋一 冨士山 龍伊 畠山 勝徳 松元 哲
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.77-84, 2017-06-01 (Released:2017-07-05)
参考文献数
24

日本において遺伝子組換えレタス(Lactuca sativa L.)の生物多様性影響評価を実施する場合,交雑性評価の対象となる在来近縁種として,L. indica(アキノノゲシ),L. raddeana(ヤマニガナ),L. sibirica(エゾムラサキニガナ),L. sororia(ムラサキニガナ),L. triangulata(ミヤマアキノノゲシ)の5種が知られている.本研究ではまず,これら5種とレタスとの雑種個体を判別することが可能なDNAマーカーを開発するため,既報のEST-SSRマーカーを利用して,各近縁種とレタスの間で多型のあるSSRマーカーをスクリーニングした.次に,交雑性については,L. indicaとL. raddeanaはレタスと交雑しないことが報告されていることから,報告のない3種(L. sibirica,L. sororia,L. triangulata)について,交雑実験によりレタスとの交雑性を評価した.その結果,L. sororiaとL. triangulataについてはレタスとの雑種個体は得られなかった.一方,L. sibiricaについてはレタスとの交配により雑種種子が得られることが明らかになった.しかし雑種個体はいずれも発芽後生長を停止した.以上の結果より,日本の自然界においてレタスと在来近縁種との交雑は起こらないか,雑種個体が得られても定着しないと考えられた.