著者
伊藤 昭博 工藤 紀雄 吉田 稔
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.190-194, 2017

<p>がん細胞の運動や浸潤に重要な働きをするアクチン結合タンパク質であるコータクチンの活性は、アセチル化などのさまざまな翻訳後修飾によって制御されている。筆者らは、酸化ストレス応答転写因子Nrf2の負の制御因子であるKeap1をコータクチン結合因子として同定し、Keap1によるコータクチンの新しい活性制御機構を明らかにした。さらに、Keap1-コータクチンシステムを介したアセチル化による細胞運動制御機構を明らかにしたので紹介する。加えて、コータクチンの脱アセチル化酵素として同定したSIRT2の阻害薬は、がん浸潤、転移の治療薬になる可能性があることから、SIRT2阻害薬探索研究を実施し、複数のヒット化合物を得ることに成功した。得られた阻害薬とSIRT2複合体のX線結晶構造から、SIRT2の新しい酵素活性の制御機構の存在が明らかになったので併せて紹介する。</p>