著者
小玉 正太 平井 孝 加藤 知行 巻渕 弘治 藤光 康信 紀藤 毅
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1706-1710, 1996-07-01
参考文献数
10
被引用文献数
11

症例は47歳の男性.肛門出血および腫瘍の肛門からの脱出を主訴として,平成6年8月1日近医を受診.平成6年8月18日,経肛門的腫瘍摘出術を施行された.平成6年9月12日当科入院.摘出標本上,高分化腺癌(mp)から,肛門粘膜上皮内にpagetoid spreadを認めたため,肛門周囲の皮膚生検を系統的に施行し,浸潤範囲を同定した.腹会陰式直腸切断術施行後1年4か月が経過したが,再発徴候なく外来通院中である.肛門管癌に合併した肛門周囲Paget病変は極めてまれで,文献上著者が検索しえた限りでは,自験例を含めて9例の報告のみである.また根治術施行前に肛門周囲の浸潤範囲を同定しえた報告は,検索しえた限り自験例のみであり,文献的考察を加え報告した.