著者
三澤 一成 加藤 知行 金光 幸秀 小森 康司 平井 孝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.1787-1796, 2006 (Released:2011-06-08)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

目的: 直腸癌局所再発は, 根治のためには外科的切除しかないが, その侵襲に見合った治療効果の得られない例も少なくない. 術前の進展度別に当院での治療成績を解析し, 外科的治療の意義を検討した. 対象と方法: 1981年から2002年に直腸癌局所再発に対し, 治癒切除目的で手術が行われた84例を, 術前画像診断から腫瘍進展の局在より, A 群: 再発腫瘍が内閉鎖筋, 梨状筋に浸潤または接する, または第2以上の仙骨に接するもの, B群: 第3以下の仙骨や, 子宮, 精., 膀胱などの骨盤内臓器に浸潤または接するもの, C群: 吻合部周囲に限局するものの3群に分類. また, 同時期に直腸癌局所再発病変の進展が高度であることを理由に非切除・手術非適応となった19例を非手術群として, 治療成績を比較検討した. 結果: 治癒切除率は全例61.9%, A群31.8%, B群80.6%, C群81.3%. 再発切除術後5年生存率は, 全例30.0%, A群5.9%, B群32.7%, C群67.0%であった. 術後局所再々発や遠隔転移について, A群で有意に早期に認められた. A 群と非手術群の比較では, 再発後生存期間に有意差を認めなかったが, 局所再発から遠隔転移が起こるまでの期間は中央値でA 群8.4か月, 非手術群18.0か月と有意差を認めた. 結論: A群では治癒切除率が低く, 早期に局所再々発や遠隔転移を来し予後不良であった. 今後, 手術適応や術式, 補助療法などの再検討が必要であろう.
著者
小玉 正太 平井 孝 加藤 知行 巻渕 弘治 藤光 康信 紀藤 毅
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1706-1710, 1996-07-01
参考文献数
10
被引用文献数
11

症例は47歳の男性.肛門出血および腫瘍の肛門からの脱出を主訴として,平成6年8月1日近医を受診.平成6年8月18日,経肛門的腫瘍摘出術を施行された.平成6年9月12日当科入院.摘出標本上,高分化腺癌(mp)から,肛門粘膜上皮内にpagetoid spreadを認めたため,肛門周囲の皮膚生検を系統的に施行し,浸潤範囲を同定した.腹会陰式直腸切断術施行後1年4か月が経過したが,再発徴候なく外来通院中である.肛門管癌に合併した肛門周囲Paget病変は極めてまれで,文献上著者が検索しえた限りでは,自験例を含めて9例の報告のみである.また根治術施行前に肛門周囲の浸潤範囲を同定しえた報告は,検索しえた限り自験例のみであり,文献的考察を加え報告した.
著者
澤田 傑 上坂 克彦 加藤 知行 森本 剛史 小寺 泰弘 鳥井 彰人 平井 孝 安井 健三 山村 義孝 紀藤 毅
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.2190-2194, 1996-11-01
参考文献数
17
被引用文献数
4

症例は52歳の女性.1981年7月,S状結腸癌を伴う大腸腺腫症の診断で結腸全摘および直腸低位前方切除術を施行した.1985年8月,CTで腹腔内デスモイド腫瘍が疑われタモキシフェン,スリンダクの内服治療を行い臨床上縮小した.1995年7月,内視鏡にて十二指腸多発性腺腫,および十二指腸下行部のVater乳頭対側に3個の腺腫内癌を診断した.9月7日全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除の予定で開腹したが,小腸間膜を広範に巻き込むデスモイド腫瘍のため再建不能と判断し十二指腸壁を切開し主だった腫瘍を摘出,小ポリープは可能な限り焼灼した.大腸腺腫症に十二指腸病変は高頻度に合併するが,傍乳頭部領域以外の部位から発生した多発性十二指腸癌の報告例はまれである.また,この際腸間膜のデスモイド腫瘍を併発すると外科的治療に制約が加えられることが有りえるので治療法の選択上注意が必要である.