著者
市村 直也 小山 祥美 佐藤 明日香 町田 友美 萩原 三千男 東田 修二
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.708-715, 2018-10-25 (Released:2018-10-27)
参考文献数
11

尿沈渣目視法における識別基準の標準化と検査担当者の分類精度を明らかにするため,『尿沈渣検査法2010』の画像による内部精度管理(internal quality control; IQC)システムを開発した。これは担当者に沈渣成分画像をモニタ上で分類させて,その精度を定量評価するものである。本研究は担当者の分類精度の検証と,臨床検査値の技師間差に対する効果の検証を目的とした。3名の担当者がシステムによるIQCを実施し,成分ごとの一致率と的中率を算出した。さらに臨床検査値の沈渣成分ごとの技師間差と陽性率の時系列変化を観察した。一致率または的中率は,60%を下回った成績不良な成分が担当者により異なっていることを示した。技師間差と陽性率変動幅の経時的推移は,IQC実施後に両値が拡大または縮小した成分があることを示した。さらに技師間差に統計学的有意差を認めた成分の数がIQCを実施した前後3ヶ月で比較すると,11成分から7成分に減少したことがわかった。開発したシステムは担当者の力量を数値化し,またIQCとしての活用により臨床検査値の技師間差に影響する可能性を示した。これは尿沈渣目視法における識別基準を標準化し,さらに検査室内の精密度の向上が期待できる。しかし患者背景などから総合的な判断が必要な沈渣成分ではその効果が限定される可能性があり,臨床検体での陽性率による技師間差の定期評価が必要である。