著者
星野 亜由美 布谷 芽依 岸田 恵津 相川 美和子 諏訪 晶子 谷田 幸繁
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.202-218, 2023 (Released:2023-04-29)
参考文献数
35

骨量測定を取り入れた, 教科横断的な食育授業を行い, 食育の有効性を評価することを目的とした. 中学2年生78人を対象とした. 食育授業は, 保健, 数学, 家庭科の計4時間で実施した. 「心身の健康」を共通の食育の視点とし, 保健は「健康的な生活と疾病の予防」, 数学は「データの分布」, 家庭科は「中学生に必要な栄養を満たす食事」の領域で行った. 骨量は超音波骨量測定装置により右踵骨を測定した. 食育授業は, ワークシートの分析により評価した. 同性, 同年齢の骨量の標準値と比較した値であるZスコアの平均値は, 男子97.6%, 女子104.0%であった. ワークシートによる振り返りでは, 概ね7割以上の者が健康に関心を持つこと, 教科の理解を深めることができたと回答した. 保健の感想では, 約9割が骨量に言及した. 対象者の記述から, 生活習慣病を防ぐための生活習慣を多面的に理解し (保健), データを箱ひげ図に表すことで骨を丈夫にするためのヒントを取得し (数学), カルシウムやカルシウムを多く含む食品の特徴を理解した (家庭科) 様子が読み取れた. したがって, 見えない健康状態を可視化する骨量測定は, 生徒にとって関心が高く, 食育を行う上で適した教材であると考えられた. また, 「骨と健康」に関する教科横断的な食育実践では, 各教科の目標を達成しながら食育の理解を深めることが可能であると示唆された. 一方, 目標に到達できていない者も一部みられたことから, 引き続き授業構成などを検討する必要がある.