著者
小椋 たみ子 松尾 雅文 松嶋 隆二 常石 秀一 竹島 泰弘
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

1.Duchenne型筋ジストロフィー児165名に対して知能、発達評価を行なった。(1)IQ69以下の精神発達遅滞は25,6%、IQ 70-89が39.6%、IQ 90-109が28.7%、IQ 110以上が6.1%で精神遅滞が1/4であった。知能(IQ, DQ)の平均は80.2であった。(2)PIQとVIQの差はWISC(94名)、新版K式(26名)においては有意差なし、WPPSI(45名)においてはPIQIQ(84.8)がVIQ(74.2)より有意に高かった。(3)下位検査の評価点はWISCでは類似問題が最低点(7.0)、迷路が最高点(11.0)、WPPSIでは理解問題が最低点(5.2)、迷路が最高点(9.1)であった。言語概念化能力と言語表出能力が低かった。(4)32名の1年以上後の再検査(平均26.6ヶ月間隔)でFIQ, PIQ, VIQとも有意差はなかった。進行に伴う知能の低下はないと考えられる。2.Duchenne型筋ジストロフィー児43名(平均7.1歳)にITPA言語学習能力検査を実施した。「ことばの表現」「ことばの類推」の評価点が低かった。3.サザンプロット法、PCR法、RT-PCR法、直接塩基配列解析法により遺伝子異常を同定した症例について、遺伝子異常と知能との関連を検討した。欠失・重複例(97名)と微小変異例(53名)で、IQの平均値の差はなかった。欠失・重複例と微小変異例について大脳、脊髄をコントロールするエクソン44と45の間にあるdp140のプロモーターと知能の関係をみると、両例とも遺伝子異常がイントロン44より上流にとどまる群はイントロン45より下流に及ぶ群に比べ、IQ、VIQ、PIQとも有意に得点が高かった。なお、欠失・重複例はイントロン45より下流に及ぶ群(65.4%)、微小例はイントロン44より上流にとどまる群(74.1%)で出現率に有意差があった。ITPAにおいてはdp140のプロモーターとの関係は見出されなかった。4.筋ジス児の言語音の有標性を検討するために構音検査を実施したが、誤構音は少なかった。