- 著者
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平内 央紀
三枝 正彦
- 出版者
- 一般社団法人日本土壌肥料学会
- 雑誌
- 日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.1, pp.41-46, 2006-02-05
- 被引用文献数
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水稲用育苗培土のケイ素供給能の評価法を検討するとともに,ケイ酸資材施用の要否基準を決定するため,36種類の育苗培土を用いて育苗試験を行った. 1)育苗培土の可給態ケイ素量は,リン酸緩衝液法では77〜662mg kg^<-1>,湛水静置法では12〜189mg kg^<-1>,上澄液法は12〜166mg kg^<-1>,酢酸緩衝液法では12〜582mg kg^<-1>と,培土によって大きく異なっていた.育苗培土の可給態ケイ素量と水稲苗のケイ素濃度との相関係数は,リン酸緩衝液法で0.86と最も高かった.なお,リン酸緩衝液法ではリン酸吸収係数が1,500以上とそれ未満の育苗培土を区別することで,より正確な可給態ケイ素の評価が可能となった. 2)酸性化多孔質ケイ酸カルシウム水和物の苗箱施用により,苗の地上部および地下部乾物重が増加する傾向が見られた.リン酸緩衝液法による可給態ケイ素量の少ない育苗培土(100mg kg^<-1>前後)と中庸の育苗培土(400mg kg^<-1>前後)では酸性化多孔質ケイ酸カルシウム水和物の施用によって水稲苗のケイ素濃度が有意に増加した.本試験の結果から,育苗培土の可給態ケイ素量の評価方法は,リン酸緩衝液法が現在用いられている評価法としては最も適していることが明らかとなった.また,育苗培土のリン酸緩衝液法による可給態ケイ素量が,非火山灰土壌を原料とする培土(リン酸吸収係数1,500未満)では200mg kg^<-1>,火山性土壌を原料とする培土(リン酸吸収係数1,500以上)では350mg kg^<-1>未満の場合に,ケイ酸資材を施用することが望ましいと考えられた.