- 著者
-
福嶌 陽
楠田 宰
古畑 昌巳
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.2, pp.173-178, 2001-06-05
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
-
6
暖地のコムギ作における収穫の早期化を実現するための基礎的知見を得るため, 早播きした秋播性コムギの分げつの発育の特徴を明らかにした. 秋播性程度の高いイワイノダイチ(秋播性程度IV)と対照品種のチクゴイズミ(同I〜II)を, 1998年の10月26日(極早播き), 11月5日(早播き), 11月24日(標準播き)に播種し, 栽培した. 単位面積当たりの最高茎数は, イワイノダイチがチクゴイズミより著しく多かった. 単位面積当たりの穂数は, イワイノダイチがチクゴイズミよりやや多く, また播種期が遅いほどやや多かった. 個体を対象として分げつの発育過程をみると, いずれの播種期や品種においても分げつは主茎の出葉にともなってT1, T2, T3およびその同伸分げつのT1P, T4およびその同伸分げつのT11とT2Pの順に規則的に出現した. イワイノダイチはチクゴイズミよりT4, T11, T2Pなどの高位・高次の分げつの出現率が高かったが, これらの分げつは無効化することが多かった. 有効分げつでは出葉速度は主茎とほぼ同じであったが, 無効分げつでは出葉速度は次第に低下し, 出葉の停止, 枯死に至った. そこで, 無効分げつは, その出葉速度が主茎の半分以下となった時点で無効化したとして, 個体当たりの分げつ数の推移をみたところ, 早播きのイワイノダイチの分げつ数が最大となる時期は早播きのチクゴイズミより遅く, 標準播きのイワイノダイチ, チクゴイズミより早かった. このような分げつ数の推移は幼穂の発育と密接に関連していることが示唆された.