- 著者
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平出 文久
- 出版者
- 耳鼻と臨床会
- 雑誌
- 耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.6, pp.1022-1027, 1989-11-20 (Released:2013-05-10)
- 参考文献数
- 26
突発難聴を主訴として来院し, 初診時に突発性難聴と診断されたが, その後の精査により肝細胞癌の側頭骨転移癌によることが判明した1例を報告した. 患者は57歳の男性で, 1987年6月右突発難聴, 耳閉塞感が発現し, 近くの病院で突発性難聴と診断され, 副腎皮質ホルモン療法を受けたが症状は改善されなかつた. 耳X線検査で右内耳道近辺の不整像が観察され, 聴神経腫瘍などの脳腫瘍が疑われた. 同年8月精査を希望し当科を受診, CTおよびMRI検査により右側頭骨底から後面にかけて大きな腫瘍塊が認められた. 右骨部外耳道底に出現した小さな腫瘍の生検によりこれらの腫瘍塊は肝細胞癌の転移癌であることがわかつた. この症例ではほかに同側の顔面神経麻痺, 反回神経麻痺が認められたが, 突発難聴とともに多発性脳神経症状が発現した場合には側頭骨転移癌の可能性も考慮すべきである.