著者
平安名 萌恵
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.19-32, 2020 (Released:2021-05-29)
参考文献数
26

非婚シングルマザーをめぐる先行研究では、1)自由なライフスタイルを求めて非婚で子どもを出産・養育する「積極的非婚シングルマザー」と2)妊娠後、パートナーに結婚や子どもの認知を拒否され、意図せず非婚で子どもを産み育てることになった「消極的非婚シングルマザー」の二つに区分され、異なる議論が展開されてきた。この2類型のどちらにも当てはまらないケースとして示されてきたのが、「沖縄の非婚シングルマザー」である。既存の沖縄研究において、相互扶助的でおおらかな共同体を前提として、積極的/消極的に拘わらず、「自由」で「奔放」に子どもを産み育てる「沖縄の非婚シングルマザー」像が提示されてきた。本研究は、沖縄における非婚シングルマザーを対象とした生活史インタビュー調査結果を基に、「沖縄の非婚シングルマザー」像の問い直しをすることを目的とした。結果として、沖縄における非婚シングルマザーは、男性優位の共同体のなかで、「気にもかけられず、期待もされてない」といった、放任的な状況に置かれていることが明らかになった。先行研究で示された相互扶助的な「沖縄的」共同体像が、ジェンダー格差を見落とした一面的なものであることが示唆された。女性たちは、共同体に頼れないからこそ、自分自身だけを頼りに意思決定しながら生きているといえる。