著者
山内 眞義 平川 淳一 木村 和夫 中島 尚登 中原 正雄 中山 一 北原 敏久 大畑 充 片山 辰郎 高原 仁 藤沢 洌 亀田 治男
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.643-648, 1989-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
15

雌と雄ラットに慢性アルコール投与を行い,アルコール性肝障害の発症と伸展に及ぼす性差の影響を検討した.雌アルコール群で最も肝ハイドロオキシプロリンの増加を認め,雌のほうが雄に比べてアルコール性肝障害になりやすいことを実験的に明らかにした.雌アルコール群では,雌コントロール群に対して,アルコール脱水素酵素(ADH),アルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性及びエタノール除去率はいずれも低下するのに対して,雄アルコール群では雄コントロール群に対してADH,ALDHは高活性を示し,エタノール除去率も速やかとなった.以上より女性のアルコール性肝障害に対する高感受性の原因として,男女間の常習飲酒に対するアルコール代謝の変動の差異が一因と考えられた.
著者
平川 淳一 木村 和夫 山内 眞義 中山 一 中原 正雄 藤沢 洌 亀田 治男 大畑 充 佐藤 泰雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1726-1730, 1989-12-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
14

約1年の間に5人の覚醒剤乱用者グループの全員にみられた非A非B型急性肝炎例を経験した.これらの症例は注射器を共用し覚醒剤の静脈注射するといういわゆる“回し打ち”を行い,いずれも急性肝炎の発症を認めた.覚醒剤乱用と肝炎発症の関連について検討した結果,通常のB型,非B型急性肝炎に比べ潜伏期の長いことが推察された.回復期に行った肝生検像は,慢性活動性肝炎の所見であった,覚醒剤による弊害は現在大きな社会問題となっており,これによるB型肝炎の報告は散見されるが,非A非B型肝炎の報告は本邦では文献上みあたらず興味ある集団発症例と思われる.
著者
佐々木 紗映 平栗 優子 岩井 一正 松崎 恭子 皆川 邦朋 畦地 良平 平川 淳一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O2120-C3O2120, 2010

【目的】当院は、身体障害を合併した症例を対象としたリハビリテーション科を併設している精神科病院である。身体・精神の各々の専門スタッフがチームとして患者の治療にあたっている。そのための情報共有を目的として、ドイツ語圏で編み出された精神科の記録と評価のシステムであるAMDPシステムの運用を開始している。AMDPとは、全140項目からなり、各項目を「なし」「軽度」「中等度」「重度」「不明」の5つの段階で評価を行いその結果について分析する手法である。当院では、Berlinグループの方法を採用しており、140項目を「妄想幻覚症候群」「うつ症候群」「躁症候群」「器質症候群」「敵意症候群」「自律神経症候群」「無力症候群」「強迫症候群」の8群に分類し、グラフなどで可視化できるようにしている。<BR>我々は、これまで精神症状が身体リハの進度やアウトカムに影響を及ぼすことを経験してきた。原因については、様々な理由が考えられるものの、精神・身体両方の治療効果について評価を続けてきたことで、それらの関連について多少の知見を見出すことができた。そこで、本研究は、精神機能向上に伴う身体機能への影響のうち、"できるADL"と"しているADL"の相違について考察することを目的とした。<BR><BR><BR>【方法】2008年3月から2009月5月末までに評価した32名について、BerlinグループのAMDPシステム各症候群(妄想幻覚・うつ・躁・器質・敵意・自律神経・無力・強迫症候群)の獲得点数と、ADL指標であるBarthel Index(以下、BI):訓練でできるADL("できるADL")と、functional independence measure(以下、FIM):実際に病棟で行っているADL("しているADL")との関係について解析を行った。解析は統計ソフトSPSSを使用し、Peasonの相関係数にて算出した。<BR><BR>【説明と同意】本研究は当院倫理委員会の審査を受けている。<BR><BR>【結果】AMDP 症候群(以下、S)とBI、FIMとの間に負の相関が認められた。特にFIMとの相関が強く、強迫を除いたAMDP症候群(幻覚妄想、うつ、器質、躁、敵意、自律神経、無力)でそれぞれ改善がみられるとFIMの点数が有意に向上していた。BIについては、BI食事とAMDP器質Sに強い相関、BI排便自制・排尿自制とAMDPうつS、器質Sが中等度の相関を示していた。FIMについては、FIM歩行車椅子とAMDP無力S、FIM理解とAMDP躁S、FIM表出とAMDPうつS、FIM社会的交流とAMDP妄想幻覚・無力S、FIM記憶とAMDP無力Sに中等度の相関、FIM更衣(上)とAMDP妄想幻覚S・無力S、FIM更衣(下)とAMDP敵意S、FIMベッド移乗とAMDP無力S、FIM歩行車椅子とAMDP妄想幻覚・うつ・敵意S、FIM理解とAMDP自律神経S、FIM表出とAMDP妄想幻覚S、FIM社会的交流とAMDPうつ・器質・躁・敵意S、FIM記憶とAMDP器質Sに中等度の相関が見られた。<BR><BR>【考察】今回の結果から、精神機能の回復に伴って身体機能も向上しているが、精神症状は特にFIM、すなわち"しているADL"動作の自立度・能力へ強く影響していることがわかった。これは、精神症状の影響を受ける量について、BIとFIMとの間に相違があることを示していると思われ、訓練室で獲得された動作が病棟ADLに反映しにくい理由であるとも考えられる。また、FIMに関しては、13項目の運動項目とAMDPとの間に9つの項目に相関関係が見られたことに留まったが、5項目の認知項目とAMDPとの相関関係は12項目に見られ、認知項目と精神症状の関係性の深さが示唆された。しかしながら、その相関関係を示す理由については今後考察・検討を重ねていく必要があり、症例数を重ねながら原因追求をしていきたい。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】精神症状精神症状と身体症状との関連性については先行研究が存在するものの、既存の評価及び汎用性の高い評価方法を用いて行った今回の調査は、精神科病院内だけでなく、一般的なリハ場面においても汎化しうる可能性を示唆している。