著者
南雲 直子 大原 美保 藤兼 雅和 井上 卓也 平松 裕基 ジャラニラ サンチェズ パトリシア アン
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.123-136, 2022 (Released:2022-06-04)
参考文献数
17

地理情報や被災記録に乏しい途上国において将来の洪水災害に備えるためには,ハザード情報を簡単に可視化・共有でき,住民らが地域の氾濫特性を理解するための手助けとなるような技術が重要な役割を果たす.そこで本研究では,フィリピン共和国の洪水常襲地を対象に,Google Earthを用いて降雨流出氾濫(RRI)モデルによる洪水氾濫計算結果を描画し,建物高さと浸水深の関係を可視化できる3D浸水ハザードマップを作成した.また,このハザードマップに関する講義およびチュートリアル教材を作成し,フィリピンでの技術普及を目的としたオンライン研修で取り上げた.その結果,3D浸水ハザードマップはフィリピンの人々も簡単に作成・利用できるものであり,地域の浸水リスクを理解するのに役立つことが明らかとなった.Google Earthは多言語に対応する無償ソフトウェアであることから,本研究によるハザードマップ作成手法は予算や人材が不足する途上国においても有用な技術であると考えられる.