- 著者
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雨宮 稔起
平田 寛
- 出版者
- 社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
- 巻号頁・発行日
- vol.89, no.1, pp.58-62, 1968
- 被引用文献数
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水酸化カリウム溶液中のマンガンーマンニットのク形波ポーラログラム(-0.35Vvs,SCE)はトリエタノールアミンのアルカリ溶液よりも検出感度が高く,またこの溶液の280mμ 付近における吸収極大は分子吸光係数(12000)がかなり大きい。しかし,この溶液は光照射や加熱により容易に変化し,かつ共存イオンの影響も大きいので,分析法としての取り扱いには困難な場合が多い。この溶液の変化を直流ポーラログラム,可視部,紫外部の吸収スペクトルおよび鉄(II)による滴定などの結果から推定すると,暗所ではマンガン(IV)の生成量が多いが,明所では生じたマンガン(IV)がマンニヅトによつて還元される速度が増すので,マンガン(III)の存在量が多くなる。また,マンニットが過剰にある間は上記の酸化還元反応をくり返すが,ついには酸化マンガン(IV)となって沈殿する。なお,直流ポ一ラログラフの波は拡散律速の比較的可逆性のよい一電子反応(Mn(III)〓Mn(IV))に基づくもの.であり,またマンガンとマンニットの結合比は,ク形波および直流ポーラログラムのモル比法による波高変化と吸収スペクトルの連続変化法による吸光度変化とから,1:2と推定した。