- 著者
-
平田 恵啓
伊福部 達
坂尻 正次
松島 純一
- 出版者
- Japan Audiological Society
- 雑誌
- AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.6, pp.659-665, 1992-12-31 (Released:2010-04-30)
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
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我々は, 蝸牛外刺激型人工内耳の開発を行っており, 音声情報を時系列信号に変換して蝸牛を刺激する方法を提案している。 本論文は, このような時系列信号がどのような刺激として知覚されるかを, プロモントリーテストで調べたものである。 結果から, 刺激閾値の個人差は極めて大きく, 刺激電流を35μAで感じた患者もいたが, 8名の患者については400μAでも刺激を感じなかった。 生じた感覚を大別すると2種類あり, 第一は音のような感覚であり, 第二は振動のような感覚やチクチクする痛みのような感覚であった。 このことから, 我々のプロモントリーテストでは聴神経ばかりでなく迷走神経や顔面神経も刺激されている可能性がある。 ダブルパルス列からなる時系列信号の弁別テストの結果から, 3名の患者については, ダブルパルスの時間差を僅かに変えただけでも生じる感覚に差がでた。 従って, 音声情報を時系列信号にして伝達する方法は蝸牛外刺激型人工内耳における信号処理方法の一つのアプローチといえる。