著者
高田 望 平野 かよ子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.67-75, 2015-10-01 (Released:2015-09-30)
参考文献数
20

本研究は,ICU において医師・看護師が終末期医療へのシフトをどのような情報・状況をもとに判断しているのかを明らかにすることを目的とした.ICU に勤務する医師・看護師各4名に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析を行った.その結果,28 コード,9サブカテゴリーから《救命の困難さ》と《治療継続の不適切さ》の2カテゴリーが抽出された.《救命の困難さ》は,【臓器機能の悪化】【治療に対する反応の低下】で構成され,これ以上の治療を継続しても患者の命を救うことが困難であるという情報である.《治療継続の不適切さ》は,【本人および家族の自己決定】【その人らしさの消失】【家族内の患者の居場所の欠如】などで構成され,これ以上治療を継続することは患者の利益にならないことを示す情報である.医師は《救命の困難さ》に重点を置いて終末期医療へのシフトを判断するが,看護師は《救命の困難さ》だけでなく《治療継続の不適切さ》を重視して終末期医療へのシフトを判断していた.この医師と看護師の判断の特徴の背景には,職務上の役割の違いがあることが示唆された.