著者
内田 翔太 篠部 将太朗 平野 尚浩
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.131-139, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
13

大東諸島は外来種によって固有陸貝相が壊滅的な状態に近づいていることが示唆されている.しかし先行研究では,外来捕食者のツヤオオズアリやオガサワラリクヒモムシの効果は無視されていた.そこで本研究はこれら 2 種に対する影響の解明を目的として,先行研究が実施された地点で 2 種の分布調査と,先行研究で不十分であった海岸線近くの陸貝調査を実施した.沖縄本島では外来捕食者に対して応答が大東諸島と異なるのかを明らかにすることを目的として陸貝調査を実施した.また,大東固有陸貝の繁殖技術の確立を目的として飼育を行った.その結果,ツヤオオズアリは小型陸貝の個体数を減少させていた.オガサワラリクヒモムシは陸貝への影響はなかった.沖縄本島では外来捕食者に対して大東諸島と似たような応答をしている可能性があった.飼育下ではダイトウノミギセルは繁殖に成功したが,アツマイマイ属は成功しなかった.大東諸島の陸貝相の保全には飼育技術の発達が望まれる.
著者
千葉 聡 平野 尚浩 森井 悠太 Prozorova Larisa 鈴木 崇規
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

小笠原諸島の陸貝化石の年代測定から、最終氷期以降、カタマイマイなどが形態的、生態的に区別のできるタイプに分化したことが示された。琉球列島の喜界島などでも同時代の化石を解析した結果、同じような変化のパターンは見られず、小笠原での急速な分化は、その放散と関係していると考えられる。一方、本土と琉球列島の近縁現生種について、系統推定とニッチ利用を調べた結果、いずれにも形態とニッチ利用の関係が示すパターンに共通性が認められたが、急速な放散はカタマイマイに限られた。島では競争によるニッチ分化が放散の要因と考えられるのに対し、本土の種分化では地理的隔離の他は、捕食-被食の効果が認められた。